パソコンのを操作するのに必要な「キーボード」ですが、実はいろいろな種類があります。世の中でごく一般的に使われているのは「メンブレン式」と呼ばれるものですが、もう少しお金を費やせば「メカニカル式」と呼ばれるキーボードを購入することもできます。
ですが、そもそもメカニカル式キーボードとは一体何なのでしょうか。どのような仕組みになっているのでしょうか。この記事では図を用いて徹底的に解説していきます。
なお、存在するすべてのメカニカルキーボードを解説する記事ではありません。
メカニカル式とメンブレン式の違い
メカニカル式、メンブレン式の他にも様々なキーボードの種類が存在しますが、ここではデスクトップパソコン用キーボードとして一般的に利用されているこの二つの方式を比べていきます。
1.メカニカル式キーボード
メカニカルキーボードを一言で説明すると
独立したキースイッチを並べたキーボード
です。わかりやすくするために簡潔にしました。それでは詳しい特徴について解説していきます。
メカニカルキーボードといったら上のように光っているものだったり、ゲーミング仕様だったりするものを思い浮かべる方も多いと思いますが、「メカニカル式」自体にそのような意味はありません。
そのため、普通のビジネス用キーボードでも採用されることもありますし、光らないものもたくさん存在します。
メカニカルキーボードの最大の特徴は、独立したスイッチがキーになっていることです。

メカニカルキーボードでは上のような写真のスイッチがキーの数だけ存在します。そしてスイッチの下の部分から基盤に接続することによってタイプ情報を送信します。そしてこのスイッチには様々な種類があり、押し心地やタイプ音が異なります。また、これらのスイッチを押したときの跳ね返りには「バネ」が使われています。
上の写真では付いていないですが、利用する時には上の赤い部分に、アルファベットや文字などが印刷された「キーキャップ」と呼ばれるパーツを取り付けます。
2.メンブレン式キーボード
メンブレン(Membrane)とは「膜」を意味する英単語です。
メンブレン式キーボードにおいては独立したスイッチがキーとなっているのではなく、大きな基盤にたくさんのラバードーム(ゴム製)がついていて、それぞれがキーとなります。
つまりは、大きな基盤にすべてのキーがのっているので独立はしていません。

上の写真を見るとイメージがしやすいでしょう。キーキャップを外した図になりますが、キーキャップがついていたところにはラバードームと呼ばれるシリコンゴムがついています(下図)

メンブレン式においてはバネによる跳ね返りではなく、このラバードームの弾力によってキーが戻っています。

そしてこのラバードームが直接基盤に設置されていて、基盤上の接点に触れることでキータイプを感知します。
両方式の違いを意識しながらその仕組みをざっと説明しましたが、
メカニカルキーボードだから本体がメカメカしいとか、キーの数が多いとか、そういうわけではなく、単に独立したスイッチを使っているというだけの話です。
ただ、この後詳しく説明しますがメカニカルキーボードは比較的高価ですので、それなりにこだわっている人だとか、ゲーマーがターゲットとなっています。そのため、必然的に光っているものやメカメカしくてかっこいいものが多くなっている傾向はあります。
メカニカル式のメリット・デメリット
それでは以上の仕組みを踏まえたうえで、メカニカル式にはどのようなメリットがあるのか、デメリットがあるのかを説明していきます。
ここでは、一番多く使われている「メンブレン式」との比較を意識して説明していきます。
メリット
- 耐久性が高い
- 整備がしやすい
- バリエーションが豊富
- タイプミスが少なくなる(個人差はあります)
私が実際に使ってみて感じたことや、Webページに載っていたものを紹介しました。
1.耐久性が高い
メカニカル式キーボード最大のメリットはその耐久性にあるでしょう。
メンブレン式ではキーの跳ね返りにラバードームが使われているので、ラバードームの弾力性が失われたら使い物にならなくなります。少し使っただけでいかれるということはありませんが、使っていくうちにだんだんと跳ね返りが悪くなってきたりするので非常にタチが悪かったりします。また、キー全体を支えるのが主にラバードームだけになるのでキーがぐらつきやすかったりもします。
一方メカニカル式についてはスイッチが独立していて、しっかりとスイッチに枠がありますのでぐらつくこともありませんし、跳ね返りには金属製のバネが使われているため耐久性も向上します。

また、タイプの識別はスイッチ内部にある二枚の金属が当たることによって行われるため、基盤にむき出しでセンサが設置されているメンブレン式と比べると耐久性が非常に高いです。
メンブレン式キーボードを見ていると商品説明に「1,000万回耐久」とか記載されていることが多いですが、メカニカル式のほとんどは5,000万回くらいは余裕で耐久したりします。自分は方式問わずキーボードを壊したことはありませんが、おそらく年中無休で使っていればこの耐久性の違いは顕れてくるのでしょう。
2.整備がしやすい
メカニカル式キーボードはキーキャップを外して内部を掃除したりするのが非常に容易ですので、整備がしやすいといえます。 また、一部の商品はキースイッチの交換をユーザーが容易に行える仕様になっていたりもしますので、万が一チャタリング現象(1回のタイプで2回分以上認識される)が発生した場合も特定のキーだけ交換なんてこともできたりします。
その点、メンブレン式は一部のキーが壊れたらもう買い替えを検討するほかありません。
このように整備がしやすいといったメリットも、寿命をより長くすることができるということにつながるでしょう。
3.バリエーションが豊富
メンブレン式においてはラバードームの質は製品によってあまり異ならないですのでタイプの感触もワンパターンとなっています。しかしメカニカル式においてはスイッチの種類がたくさんありますので、好みに合ったタイプの感触を選ぶことができます。
このメカニカル式キーボード用のスイッチは様々な会社が製造していますが、その中でも有名なのは「Cherry MX」でしょう。
いわゆる「赤軸」「青軸」「黒軸」などというスイッチのラインナップが存在していて、それぞれ押し心地が異なります(この後詳しく説明します)
なので、メンブレン式キーボードの押し心地があまり好きではないという方にはとてもおすすめです。おそらく、メカニカル式キーボードにおいて自分の好みの感触が見つからないことはないのではないでしょうか。
4.タイプミスが少なくなる
個人差ありますが、メカニカル式キーボードではキーのぐらつきが少ない上に、スイッチの種類によっては入力したキーを押し込んだ感覚を指で感じることができるので、タイプミスが少なくなる傾向にあります。
メンブレン式ではキーを押し込む角度によって非常に押しにくかったりしますが、メカニカル式ではどの角度からタイプしても同じ感触を得ることができますので、非常に安定しています。
ただ、これは個人差がありますし、キースイッチの種類にもよります。
デメリット
- 打鍵音が大きい(スイッチによる)
- 高価
- 好みがわかれる
1.打鍵音が大きい
メカニカル式キーボードではスイッチ内部に金属のパーツが多く、スイッチをしっかりと支えていますのでメンブレン式よりも打鍵音が大きくなる傾向にあります。また、メカニカル特有の金属っぽい音が聞こえたり、金属っぽい感触が手に伝わってきたりします。
一方メンブレン式はラバードームを打鍵するだけなので比較的タイピング音がソフトになります。
もちろんスイッチの種類によっては、むしろメンブレン式よりも静かにタイピングできるという場合もあるのですが、やはりメカニカル式特有の音が出たりします。その音が好きで購入する人は多いと思いますが、少し気になるという方には向いていないです。
もちろんタイピングをする人にもよります。普段から力強くタイピングをする人はどんなキーボードを使っても力に比例してうるさくなるのでどうしようもありません。
2.高価
メカニカル式キーボードには独立した繊細なスイッチがたくさんあるわけで、その分コストが高くなってしまいます。
たまに中華製のメカニカルキーボードがメンブレン式並みの値段で売られていることがありますが、しっかりしたものを購入したいならば1万円くらいを下限に考えた方が良さそうです。
また、メカニカルキーボードのターゲット(こだわっている人やゲーマー)の性質上、光らせたり凝ったデザインにして販売されることが多いため、値段が高くなってしまう傾向にもあります。
ただ、メカニカルキーボードを考えている以上、価格についてはあまり気にしないスタンスの方が良いです。
3.好みがわかれる
メンブレン式はごく一般的なキーボードとして世の中に浸透しているだけあって無難な打鍵感となっていますが、メカニカル式においては少々リスキーなところがあります。
Cherry MXのスイッチ「茶軸」は無難だといわれますが、あれも一応メカニカル式キーボードですのでそれなりに独特なタイプ感となっています。
なのでキーボードにあまりこだわらない人はメカニカルキーボードを選ぶ理由はあまり無いかと思います。しかし、どのような押し心地なのか理解したうえで、もっとこだわりたいという方には最高でしょう。
この後、メカニカルキーボードのスイッチの種類をざっと説明していきます。
キースイッチの種類と最適な用途
続いて、メカニカル式キーボードのキースイッチの種類をいくつか紹介します。
ここでは、キースイッチ製造会社の中でも特に有名で人気な「Cherry MX」社のものをいくつか紹介します。
また、スイッチの仕組みを説明したうえでどのような用途に最適なのか、どのような人に向いているのかについても説明していきます。
茶軸
仕組み
これから紹介する画像は公式ホームページから引用したものになります。
さて、一番最初は茶軸キーボードです。左の動く画像をみてもらえばわかる通り、タイプする時途中にわずかながらスイッチ感が発生します。
右の画像ではそれがグラフ化されています。複雑なグラフになっていますが、簡単に言えばキーを押していったときに指で感じ取る重みを表しているイメージです。
タイプとして認識される直前に山と谷があり、ここでタイプした感を生み出すことができます。この後紹介する「青軸」ほどクリック感はないものの、しっかりとタイプしている感覚を得ることができますし、キーの重さもごく一般的なのでメカニカルキーボード初心者に向いていると言われます。
タイピング音もそれほど気になるものではありませんので、職場で使うのもアリなのではないでしょうか。
動作音
こんな人・用途におすすめ
- メカニカルキーボード初心者
- うるさすぎない程度のクリック感を好む方
- キー入力が比較的激しめのゲーム
赤軸
仕組み
続いては赤軸キーボードです。赤軸キーボードの最大の特徴はその静音さにあります。
左の動く画像をみてもらえばわかる通り、キーを押し込む時につっかかりがありません。そして右のグラフを見てみると、終始一定の力加減で押し込めるようになっているのがわかります。
基本的なキーの重さについては茶軸と変わらないですが、クリック感が一切ないためより軽いタイピングを実現することができます。
メンブレン式ではキーを押し込む時どうしても途中で硬くなってしまいますが、赤軸に関しては全く硬くなりません。「サクッ」といった感じです。
ただ、メンブレン式とはかなり違う感触ですので慣れない方は多いと思いますし、好みが分かれると思いますので、注意が必要です。
軽くて動作音も控えめなため長文を入力する人にはおすすめでしょう。
動作音
こんな人・用途におすすめ
- 静かなオフィス内
- 長時間入力
- 高速長文入力
- 軽いキータッチが好みの人
青軸
仕組み
続いては青軸キーボードです。青軸キーボードの最大の特徴はカチッっというクリック感です。クリック感だけではなく、実際にマウスのクリックのような音がします。そのため、タイピング中はずっとマウスのクリックをしている感覚になります。
左の動く画像をみればわかる通り、ある一定の力をかけるとクリック音を生み出すパーツが一気に落ち、ここでクリック音が鳴ります。そしてこのクリック音と同時に打鍵が認識されます。
赤軸・茶軸と基本的なキーの重さは変わりませんが、クリック感がある分手ごたえはあります。それゆえに、キー入力をより確実に行うことができるため、ゲームにはとても向いているといえます。ゲーミングキーボードの多くは青軸スイッチを採用している印象です。
動作音
こんな人・用途におすすめ
- クリック感を好む人
- ゲーム
- メカニカル感を味わいたい人
黒軸
仕組み
最後は黒軸キーボードです。黒軸も赤軸と同じようにクリック感はないのですが、右のグラフをみてもらえばわかる通り、全体的に重たくなっています。
かなり力をいれないと押し込めないほど重いわけではないですが、試しにタイピング、特に長文等を入力してみると明らかにその重さが感じられます。
普段から力強くタイピングをしている人ならちょうどよいのかもしれませんが、あまり重いのが得意ではない方がこのキーボードで長時間タイピングをすると疲れます。ただ、重たい分跳ね返りが良いため、短時間力強くタイピングをするのならむしろ心地よいくらいです。
動作音
こんな人・用途におすすめ
- 力強くタイピングしたい方
- 「スコッスコッ」という爽快タイピング音が好きな方
いかがでしたでしょうか。この記事ではメカニカルキーボードの仕組みを説明するだけなのでおすすめの商品は紹介しませんでしたが、また別に機会におすすめのメカニカルキーボードを紹介していきたいと思います。
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