たぶんパソコンゲーム好きの人なら一度は「グラフィックボード」という文字を見たり聞いたりしたことがあると思います。 そして最新のゲームを快適にプレイするためにはこの「グラフィックボード」が高性能なものでないといけないと言われています。
ですがそもそも「グラフィックボード」とは何なのでしょうか? サルには失礼ですが、サルでも理解できるようにわかりやすく説明していきます。
ちなみにサルは好きです。
この記事のポイント
- グラフィックボードには「GPU」が入っている
- GPUでは情報をもとに絵を描く
- 最新の3Dゲームを快適にプレイするには、高性能なGPUが必要
グラフィックボードとは?
板
グラフィックボード(ぐらふぃっくぼーど)というのは、英語「Graphic Board」をカタカナにしたものです。
グラフィックは「映像」で、ボードは「板」を表しています。
実はグラフィックボードというのは板状の形をしています。

この板状のものは、パソコンの決まった部分に取り付けることができます。ただ、上のような大きな板状のものが搭載できるのは大きいデスクトップパソコンだけなので、ノートパソコンに搭載されるものはもっとコンパクトです。
そして「グラフィック(映像)」というのは、この板が「映像関係」の仕事をしているから付いている名前です。
GPUが入っている
そしてこの板の中にはとても優秀な装置が入っています。その名は「GPU(ジーピーユー)」で、この装置がグラフィックボードの脳みそになります。

あの板の中には上のような小さなチップが付いていて、これがGPUです。このチップが脳みそなので、このチップで仕事が行われます。その時にものすごく熱を発するので、グラフィックボードには大きなファンが付いているものが多いです。
主に、グラフィックボードの性能(スペック)というものはこのチップ(GPU)の種類で変わってきます。消費電力も、熱を発する量もすべてこのチップが主にかかわってきます。
では一体このチップではどんな仕事が行われているのでしょう?
GPUとは?
たぶん、ハイスペックパソコンで最新のゲームを快適にプレイしたいなーと考えている人なら「GPU」ではなくて「CPU」というものも聞いたことがあるのではないでしょうか?
この二つは別物なので同じにしないようにしましょう。CPUはパソコンの「脳みそ」になっていていろんなお仕事をしますが、GPUが無いと私たちはうまくパソコンを動かすことができないんです。一体どういうことでしょうか?
レンダリングというお仕事を行う
レンダリング、サルは知らないだろうと思いますのでここでもわかりやすく解説します。
まず第一に、GPUが主に行うお仕事というのは「レンダリング(rendering)」です。この用語も英語をカタカナにしただけなのでその意味はさっぱり想像できないと思います。
ではここで、小学4年生のA君のテストの様子を見てみましょう。これは算数のテストです。

(クリックで拡大)
A君は図形の問題にさしかかりました。問題文は
「角Aが60度、辺ABが5である三角形『ABC』があります。ここで~」
と続いています。この時A君は、文字のままだとわかりにくいので、上のようにノートに図を描きました。これがレンダリングです。つまり、角度とか辺の長さとかの文字情報だけだとよくわからないから、その情報をもとに「見える化」するという行為がレンダリングなのです。
パソコンにおけるレンダリング
でもこれは算数のテストの話です。算数のテストでは図形に関する情報が数行で説明されるので人間でもすぐに図を描くことができると思います。
でもパソコンの世界では1秒間に何十回も、図形に関する情報を数千、数万文字で説明されます。なので、情報をすぐに絵にする能力が必要なのです。
この能力が、「GPU」には備わっています。
そして絵にするというのはつまり、モニター(画面)に表示できる信号にするということです。そうしたら私たちもモニターを通してパソコンを操ることができます。 そのため、グラフィックボードにはモニターにつなぐための端子がいくつかあるんですね(HDMI等)
GPUが得意な処理
ではCPUはこの「レンダリング」ができないのかという話になりますが、もちろんできます。でも、GPUとCPUには主にこのような違いがあります。
CPU | GPU | |
---|---|---|
脳みその数 | 少ない(数個) | 多い(数千個) |
1人当たりの頭の良さ | 頭良い | 悪い |
CPUの中にはとても頭の良い人が何人かいて、お仕事をしています。そしてGPUの中にはあまり頭の良くない人が数千人いて、お仕事をしています。
さっき算数のテストの例を出したとき、図形の情報をもとに絵を描くというのはそこまで難しくなかったと思います。でもパソコンにおけるレンダリングでは1つひとつの処理は難しくないものの、それを1秒間に何万、何百万と行わなければなりません。
この時、脳みその数がとにかく多い「GPU」が活躍します。
例えば、「50音(あ~ん)を紙に書いてください」と言われたら、頭の良い先生が一人で全部書くよりも、何十人もいる生徒が分担して一気に書く方が圧倒的に速く仕事をこなせるということですね。 レンダリングにGPUが使われるというのはそういうことです。
グラフィックボードが無くても映像は見れる?
ここで一つ疑問です。パソコンにおけるレンダリング、つまりは「映像を見せるためのお仕事」を行うのはグラフィックボードに入っている「GPU」だと説明しましたが、
グラフィックボード(下のようなカード)を挿していないパソコンでもモニターで映像を見ることはできますよね?

この時、実はCPUというパーツに入っている小さな「GPU」が代わりに仕事を行ってくれます。 これは、CPUの「内蔵グラフィックス」というもので、Intelという会社のCPUだとしたら、「Intel UHD Graphics」などが例です。
でもこの内蔵グラフィックスは小さくて、脳みその数が少ないので上のようないかついグラフィックボードほどの性能は出せません。
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どれくらい違うのでしょうか。 グラフの左は最新の高性能CPU「Core i7-9700」についている「内蔵グラフィックス」の性能で、右は最新の3万円くらいで買える「GTX 1660 SUPER」というグラフィックボードの性能です。
こんなに違うんですね。
これじゃあCPUの内蔵グラフィックスは使い物にならんな
ですが、グラフィックボードを使っていなくても、つまりCPUの内蔵グラフィックスを使っていたとしても、Youtubeの動画とかは結構快適に見れると思います。 このように、内蔵グラフィックスにも使い物になるレベルの性能は備わっているのです。そのため、グラフィックボードの性能が極端に高いということになります。
ではこの「極端に高いグラフィック性能」はどんな時に必要になるのでしょうか?
グラフィックボード活躍の場
最初に、「パソコンゲーム好きならグラフィックボードは一度は聞いたことがあるのではないでしょうか」と言いました。
それは、パソコンゲームを快適にプレイしようとするときにグラフィックボードが必要になるためです。 つまり、パソコンゲーム、特に最近の「3Dゲーム」は極端に高いグラフィック性能を必要とするのです。
3Dゲームの特徴
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3Dゲームというのは、立体感あふれるゲームということです。
3Dメガネ使ってないし結局画面上では2D(平面)やろ?
確かにその通りなのですが、画面上でもモノを立体に見せるために、パソコンの中ではモノを立体なものとして扱っています。
といってもイメージがつきにくいと思います。
例えば、今すぐに立方体を書いてと言われたら誰もがすぐに以下のような図を描くと思います。

しかし「この立方体を回転させて」とか言われたら困惑するでしょう。それは、ただ単にこの図形を回転させるだけでは、立方体が回転しているようには見えないからです。そこで、いっそのこと物体を最初から「立体」として扱います。
この三角コーンは視点(カメラ)を表していますが、物体を立体として扱っているので物体自体が動いたら画面上ではかなりリアルに再現できます。

これは人気ゲーム「フォートナイト」の車の様子ですが、車はあらかじめ「立体なモノ」として扱われているので、少し動いて視点を変えたとしてもちゃんと車が立体的に見えます。 つまり、あらかじめ車の隅々まで読み込んでいるのです。
そうなると平面のゲームよりも情報が格段に増えます。だから3Dゲームでは極端に高いグラフィック性能が求められるのです。
そして、グラフィックボードはそれに応えることができるのです。
レンダリング以外の処理
昔のグラフィックボードといったら「レンダリング」しか行わないようなものが多かったのですが、最近ではその性質を活かしていろいろな処理に活用されています。
このような処理を「GP-GPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)」と言います。
つまりグラフィック処理(レンダリング等)だけではなくて、普通の計算なんかもグラフィックボードに任せてしまおうという処理ですね。 でも先ほど説明した通り、グラフィックボードは単純な計算をたくさん行うのが得意なので、そういった用途に使われます。
例えば一時期流行ったものとしては「マイニング」でしょうか。マイニングでは鍵を解くためにとにかくすべての通りを計算します。ローラー作戦です。
ただ話が脱線してしまうので今回はこの辺にしましょう。