スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスが普及してから「バッテリー」について気にする機会が多くなりました。
スマートフォンのバッテリー容量は年々増えてきていますが、根本的なテクノロジーとしてはかなり前から「リチウムイオン電池」が使われ続けています。ですが今、新技術として「グラフェン電池」が登場しようとしています。
この記事では、リチウムイオン電池の弱点をまんまと克服すると期待される「グラフェン電池」について図を用いて徹底解説していきます。
なお、私はこの道の専門家ではありませんので間違った理論を説明してしまうかもしれません。あらかじめご了承ください。
この記事を2文で説明すると
- グラフェン電池は、二重層キャパシタ(スーパーキャパシタ)と組み合わせることによって一般的なリチウムイオン電池よりも長寿命、高エネルギー効率を実現することができる
- 将来スマートフォンや電気自動車に利用されると予想される
そもそもグラフェンとは?
グラフェン電池と聞いてすぐに「あ~グラフェンで作った電池か。」と思える人はそう多くないと思います。というのも、グラフェンというのは物質の名前で、その概念自体は以前から知られていた物なのですが、実際に取り扱えるようになったのは最近のことです。
家電量販店に販売されている電化製品に応用されているはずもないので、私たちが知らないのも無理はないです。
そしてグラフェンはその特性から「夢の新素材」と呼ばれることも多いのですが、その実態としてはごくごく普通の「炭素原子」の集まりです。
炭素原子の集まりといったら黒鉛(鉛筆)やダイヤモンドを想像される方は多いでしょう。ではグラフェンと他の物質は何が違うのでしょうか。
グラフェンと他の物質の違い

こちらの模式図を見ていただくとわかりやすいかと思います。
この粒一つひとつは炭素原子を表していて、炭素原子同士の結合を棒で表しています。
ダイヤモンドは一つの炭素原子に4つの炭素原子が漏れなく接続されています。
立体的に非常に安定した構造をとっており、この構造の如く、実際にとても高い硬度をもつ物質となっています。
一方グラファイト(黒鉛)は六角形を繰り返している層が積み重なってできています。つまり、立体的な構造というよりは平面的な層を積み重ねている構造といった感じでしょう。
そしてこの「層」こそがグラフェンになります。
つまり、グラフェンが積み重なってグラファイトができているということです。
この層を取り出せばグラフェンを生成することが可能になるということは前々から知られていたのですが、層単位ではがすのにとても苦労していました。ただ、最終的にはテープで引きはがすというアナログな方法で取り出すことに成功しました。(アンドレ・ガイム氏 コンスタンチン・ノボセロフ氏 2004年)
グラフェンの特徴
グラフェンというと一つの層のことをさしますので、シート状になっています。
このシートの厚さはわずか1nm程度(10億分の1メートル)となっていて、しなやかで透明です。黒鉛となると黒っぽくなりますが、層自体は無色透明なのです。また、厚さが薄いことで表面積をとにかく稼ぐことができます。
そしてしなやかではありますが炭素の六角形構造によりダイヤモンド並みの強度を持ちます。また、電気の伝導率は銀よりも高く、熱の伝導率は銅の10倍程度です。
また、グラフェン自体は炭素でできていますので、重金属を使うことはありません。
これまでの話で、グラフェンが他の伝導体とは一味違った物質であり、エネルギー効率を良くすることができそうだということがなんとなく想像できたと思います。
リチウムイオン電池とグラフェン電池の違い
グラフェンについてざっと説明できたところで、続いて本題に入っていきます。
現在バッテリーには「リチウムイオン電池」が多く使われていますが、グラフェン電池はリチウムイオン電池とは何が違うのでしょうか。
ここであらかじめ説明しますが、グラフェン電池では「電気二重層キャパシタ(EDLC/スーパーキャパシタ)」というスタイルをとるのが最適だとされています。必ずしもグラフェン電池がスーパーキャパシタを用いるとは限りませんが、スーパーキャパシタにおいてはグラフェンの特性を活かすことができるのです。
そういうわけで、ここでは一旦「一般的なコンデンサ(リチウムイオン電池等)」と「電気二重層キャパシタ」を用いた電池の構造の違いについて説明します。
電気二重層キャパシタとは


一般的な二次電池(リチウムイオン電池等)では化学反応によりエネルギーを蓄えていますが、電気二重層キャパシタではイオンの物理的な吸着のみでエネルギーを蓄えます。
イメージでいうと、例えば熱を蓄えたい時に
- 一般的な二次電池 → カイロ
- 二重層キャパシタ → ゆたんぽ
といった感じです。カイロでは内部のエネルギーを化学反応により取り出すことができ、ゆたんぽは中にお湯が入っているので直に温かさが伝わってきます。
あらかじめ二重層キャパシタの特徴を説明しておくと
- 数百万サイクルの充放電が可能(長寿命)
- 完全放電が可能
- 体積当たりの蓄電量が少ない
- エネルギーの漏出が多い
それぞれ「カイロ」と「ゆたんぽ」に当てはめてみると何となくわかると思います。
そして二重層キャパシタの問題点としては、体積当たりの蓄電量が少ないことや、エネルギーの漏出が多いことがあげられます。
たしかにゆたんぽはカイロに比べて大きくなりがちです。それに、使っていなくても常に多くのエネルギーが放出されます。
相性が良い、グラフェン
以上のように、長寿命などのメリットを持ち合わせる二重層キャパシタにもいくつかの欠点はあります。
ですが、ここでグラフェンが活躍すると期待されています。
ゆたんぽが大きい方がたくさんのお湯が入り、熱の持続性が向上するのと同様に、二重層キャパシタにおいてもイオンを吸着させる物質の表面積が広い方がより多くのエネルギーを蓄えることができます。
そこで活性炭が一般的に利用されているわけなのですが、グラフェンはその特性上、更に表面積を稼ぐことができるので体積当たりの蓄電量を圧倒的に増大させることができるのです。
そのため、二重層キャパシタの最大のデメリット「体積当たりの蓄電量が少ない」を克服することができるかもしれないと期待されています。
そして、もしもグラフェンを二重層キャパシタスタイルに取り入れることができたら、もはやリチウムイオン電池の立場などありません。
リチウムイオン電池とグラフェン電池の違いを意識しつつ、二種類を使い分けて運用するというよりは、もはやグラフェン電池が完全に取って代わるようになるかもしれません。
どう利用される?
グラフェン電池について語ってきましたが、実際のところまだ量産できる段階までは進んでいません。 しかし、これらの利点を考慮すると今後あらゆることに有効利用できるのではないかと期待されます。
スマートフォンの電池
基本的にはすべてのバッテリーにおいてこのグラフェン電池を用いるべきだと言えるのですが、特にスマートフォンをはじめとするスマートデバイスには最適といえるでしょう。
スマートフォンで多くの事をできるようになり、多くの人が一日に一回バッテリーを充電していると思います。そんな中問題になってくるのは充放電を繰り返すことによる電池寿命の低下ですが、これまでに説明してきたように、グラフェン電池を用いれば従来のリチウムイオン電池とは比べ物にならないくらいの長寿命を手に入れることができるでしょう。
これでバッテリー交換のためにわざわざ修理に出す必要もなくなります。それに、グラフェンを搭載することで更に大容量にすることができるかもしれません。また、グラフェン電池には充電が速いという特徴もありますので、スマートフォンのバッテリーに適しているといえます。
ちなみに、実際にSamsungのスマートフォンやHuaweiのスマートフォンに搭載されるといわれています。
電気自動車
電気自動車はだいぶ前から注目されていますが、実際のところ街中を走っているほとんどの車がまだガソリン車です。これには様々な要因があると考えられますが、その一つに、「電池寿命を考える必要があるため」ということがあるでしょう。
電気自動車にもスマートフォンと同じようなバッテリーが搭載されているわけで、何百回も充放電を繰り返していたら劣化します。
しかしグラフェン電池を用いればバッテリー寿命など半永久的に気にする必要がなくなります。 それに、グラフェン電池の「充電が速い」という特徴を活かして、まどろっこしい充電作業もサクッと完了できるようになるかもしれません。
いかがでしたでしょうか。まだ実用化されていない新バッテリー技術ですが、2022年頃から普及し始めると期待されています。もしもグラフェン電池が広く使われるようになったら「バッテリー」の見方が変わるかもしれませんね。
参考記事:https://www.chemi-con.co.jp/tech_topics/top_edlc_01.html
https://wired.jp/2018/11/07/graphene-batteries-supercapacitors/
https://www.matsusada.co.jp/column/edlc.html
https://www.fujitsu.com/jp/group/labs/resources/tech/techguide/list/graphene/p02.html
http://www.nm.elec.mie-u.ac.jp/cnt.html
https://www.mikado-d.co.jp/m-online/post-16330
https://wccftech.com/huawei-p40-pro-no-graphene-batteries-2020/
https://wccftech.com/graphene-batteries-for-smartphones-ready/
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