自作パソコンを作る上で最も重要になってくるのがやはり「CPU(中央処理装置)」でしょう。でもCPUは大量の処理を行う場所ですので、発熱量が非常に高いです。そのため冷却装置を装備する必要があります。
そこでCPUクーラーの他にも、「CPUグリス」と呼ばれるパーツも必要になってきます。 でも一体CPUグリスとは何者なのでしょうか? なぜ必要になってくるのでしょうか? この記事では図を用いて解説していきます。
この記事を2文で説明すると
- CPUグリスは粘度のある物質で、CPUの上に直接塗布することによってCPUからの熱をCPUクーラーに効率的に伝えることができる
- 素材や特性など、様々な種類が存在し、塗りやすさ等にも差が出てくる
CPUグリスとは?
それでは早速、CPUグリスとは何なのかについて解説していきます。
見た目
CPUグリスについて説明する前に、その実態をご覧いただきましょう。

これは私が1年前くらいに購入したCPUグリスになります。注射器のような形をしていて、実際に注射器のように後ろの部分を押すと前からペースト状のものが出てきます。 CPUグリスというのはこの注射器のようなものの事ではなく、この中に入っているペースト状のものです。
私の宿題の上に少しばかり出してみましょう。

中身は流動性のあるドロッとした物質で、表面はつやつやしています。

拡大してみるとその粘性がわかるかと思います。ねっとりしていて指で触ると汚くなります。
どこにつけるの?
そしてこの流動性のある「CPUグリス」、一体どこにつけるのでしょうか。それは文字通り「CPU」に直接塗布します。

薄く延ばして塗ったり、一点に集中させて積もらせるように塗ったりと、塗り方は様々ですが、基本的にCPUの上に直接塗ります。
必要性
CPUの上にドロッとしたCPUグリスを塗るのはわかりましたが、ではなぜこのCPUグリスが必要なのでしょうか?

そもそもCPUというのは大量の処理を行う場所で、大量の電力を消費するのでその分発熱量も多くなります。CPUの種類や使い方にもよりますが、そこそこ負荷をかけると70℃に達することもしばしばあります。 場合によっては90℃を超えることもあります。 しかしこれ以上熱してしまうとCPUの処理に支障をきたすようになりますし、周りのパーツを傷めてしまう恐れがあります。
そこでCPUクーラーを取り付けることでCPU温度を抑えることができるのです。
先ほど70℃と言ったのはCPUクーラーがあるからであって、CPUクーラーが無いと普通に100℃に達したりもします。 そのためCPUクーラーは非常に重要なのですが、上の図を見るとCPUクーラーとCPUの間にグリスが挟まっているのが確認できるでしょう。
CPUとCPUクーラーの仲介
CPUクーラーについているヒートシンクにCPUの熱が伝わり、それを冷却ファン等で外へ流すことでCPUの温度を抑えることができるわけですが、CPUとCPUクーラーを直接つけようとしても届かなかったり、接触不良を起こしたりします。

ヒートシンク、CPU両者ともハードな金属でできていますので柔軟に接着することができません。そこでねっとりしていて変形することのできるCPUグリスが仲介することで、うまく熱を伝えることができます。
ただ、モノにもよりますがCPUグリス自体の熱伝導率は銅などの金属の数十分の一程度しかありませんので、本当はCPUとヒートシンクを直接つなげればそれが一番良いです。
ただし、空気よりは1000倍近く熱伝導率が高いですし、水よりも20倍程度熱伝導率が高い素材でできているので無いよりはましです。
なお、この熱伝導率についても種類によりますし、性能の高いものほど価格が高い傾向にあります。
CPUグリスの種類
CPUグリスがたった一種類ならここまでCPUグリスで悩むことは無いでしょう。しかし一口にCPUグリスと言っても様々な種類のものがあります。
素材
CPUグリスの素材には主に以下の4つの種類があります。
- シリコン
- シルバー
- ゴールド
- ダイヤモンド
シリコングリス
そして主に使われているのはシリコングリスで、一番熱伝導率が低い代わりに低価格で購入することができます。そういわれるとなんだか品質が悪そうなイメージですが、「主に使われている」ということは、逆に言えば「ほとんどのパソコンはこのグリスで大丈夫」ということです。実際に、特にこだわりがない人は基本シリコングリスで良いと思います。数百円で購入できるものも多いので、冷却不足感を感じたらシルバーグリス等に乗り換えるのもアリです。
シルバーグリス
シルバーグリスは文字通り、銀が含まれているグリスです。銀100%というわけではありませんが、銀が含まれていることによってより熱伝導率が高くなります。中にはシリコングリスの倍程度の熱伝導率を保有するものもありますが、銀含有量が非常に少ない「なんちゃってシルバーグリス」みたいなものもありますので、熱伝導率を気にする人はしっかりと値を確認しましょう。
ゴールドグリス
シルバーグリスの兄弟みたいなものとしてゴールドグリスというものもありますが、熱伝導率はシルバーグリスよりも低い場合が多いです。ただ、見た目が金色なので好む人は多いかもしれませんね。ゴールドグリスと書いてあっても金を含まず、銅のみ含んでいる場合も多いみたいです。
ダイヤモンドグリス
ここまでくるともはや趣味レベルです。もちろんダイヤモンド100%というわけではありませんが、銀等よりも数倍高い熱伝導率を保有していますので、全体として熱伝導率は非常に高くなります。
中にはシルバーグリスの倍程度高いものもありますが、その分値段は高いです。
高いと言っても 数百円 / 回 程度の話です。
このように素材が違うと熱伝導率に差が出て、実際にCPU温度等の数値でも差が表れてくるわけですが、明らかにグリスが原因で冷却不足だとわかっている場合以外は基本シリコングリスで大丈夫です。 正直体感ではこれらの違いはあまりわかりません。 まず最初はCPUクーラーを疑うべきですね。
絶縁性
CPUグリスには絶縁タイプや、そうでないタイプのものがあります。絶縁とは電気をほとんど流さないということですね。絶縁タイプと書いていないからといって導線のように電気が流れるわけではないですが、わずかに電気が流れるのも許せないならば絶縁タイプを購入しましょうという話です。
なぜ絶縁性が気にされるのかといいますと、CPUグリスが基盤にこぼれるなどした時に絶縁性でないとショートを引き起こす恐れがあると言われているからです。 ただ、そもそもマザーボードにこぼれること自体少ないですし、こぼれてもほとんど影響がない説の方が有力です。
しかし絶縁タイプの方が滑らかで塗りやすい傾向にあると言われています。
他にもメーカーによって見た目や香り、塗りやすさ、そして味などにも差が出てきますが、そこはレビューを参考にするほかありません。 あ、食べないでくださいね。