皆さん、現在グラフィックボードの価格が非常に高騰していることはご存じでしょうか。グラフィックボードは精密機械ということで元々高価なものではありますが、それが定価より極端に高くなっていたり、もう数年前のものである型落ち品がいまだに同じ値段で売られていたりなどグラボ市場は不健康なものとなっています。
そのため自作ゲーミングパソコンを作ろうとしている人が非常に困っていますし、現に私も今困っています。そこでこの記事では、なぜ現在グラフィックボードの価格が高騰しているのか、その原因などについて考察&解説していきたいと思います。
グラフィックボード価格の推移
おそらくこの記事を見に来てくださっているということはすでにこの荒くれたグラボ市場の現状をご存じになっているということなのでしょうが、実際にグラフでどれほどグラフィックボードの価格が上昇しているのか、その推移を確認していきましょう。
と、その前に、BableTech管理人がこの記事を作成した経緯についてちょっとだけ語らせてください。。
この記事を作成しようとした経緯
この記事を作成することになった経緯としましては、正直ゲームは関係ありません。今後当サイトの記事のサムネイル等を自分で手書きで作ろうと思いまして液タブ(液晶ペンタブレット)を購入したところ、パソコンの映像出力端子が足りないということでグラフィックボードを取り付けようとしたわけです。 そこで久しぶりにグラフィックボードを購入しようとしたわけですがそこで最近のグラボがありえないくらい高価になっていることに気が付きました。 まぁ最近のはいっちゃん性能高いし、そんなものかぁー とあきらめてメルカリで探していたところ、メルカリでも全体的に高くなっていて、型落ち品が定価以上の価格で売れていたりしたので、グラボ市場自体がやられているのだと感じ、いろいろ調べていたらやはり様々な要因によってグラボ価格が高騰しているということがわかりました。
さて、気を取り直して、グラボ価格の推移についてみていきましょう。
MSI RTX 2080
Nvidiaの現行品であるRTX 3000シリーズから紹介したかったところですが、このシリーズはとてつもない高さで登場し、そのまま一切値下がりしていない感じなので「価格高騰」が一目でわかるRTX 2000シリーズからいきましょう。
まずはAmazonにおけるMSI公式ショップのRTX 2080です。ここでは、Google Chromeの拡張機能「Keepa」による価格推移グラフを参照します。

少し見づらいかもしれませんが、グラフ上にある青色の細いラインが新品の価格になります。グラフの左端は2019年の春ごろで、右端は2021年の8月ごろとなっています。
最初は10万円程度だったこのハイエンドグラボも、今となっては… と安くなるのではなく現在ではなんと35万円を上回っています。
型落ちグラボが値下がりされていくどころか、どんどん値上がりしている現状、相当やばいですね。
ZOTAC RTX 2070 SUPER
続いてはZOTACのRTX 2070 SUPERです。

こちらも少し見づらいですが、この二年間に渡って3倍以上価格が高騰しているのがわかります。何がやばいかって、成長が速い半導体市場では二年も経てば半分のコストで同じ性能のものを製造できるようになるわけなんですよ。それなのにも関わらず二年たって3倍以上の価格になっているということは、もはや6倍以上価格が膨らんだと言うこともできるわけなのです。
ましてや、これが現行モデルというわけではなくRTX 3000シリーズという新モデルが登場しているのにですね…
玄人志向 GTX 1050 Ti
続いては更にさかのぼりまして、GTX時代になります。一頃最も人気のあったグラボと言っても過言ではない「GTX 1050 Ti」です。補助電源が必要なく、価格も安いのにそこそこのゲームがプレイできてしまう魔法のようなグラフィックボードでして、様々なゲーミングパソコンに取り入れられた上に、パーツ単体を購入する人もたくさんいましたね。

こちらは更に見づらくなっていますが、なんと2017年の1月からの記録が載っています。実に4年間以上にわたる価格推移になりますが、値下がりしているどころかちょっとずつ価格が上昇しているのがわかります。
当時人気だったとはいえさすがに今となってはその性能はイマイチとなっていますので、値上げされているとなるとさすがに購入する気は起きないですよね。しかしながら出品者がむやみに値上げを行うわけがありません。この価格で実際に売れる(均衡価格に近い)からこの価格に設定されているわけであって、それくらいグラボ市場は不健康なのです。
ちなみにKeepaのようなグラフでは図示できないですが、メルカリ市場(中古市場)でもグラボの価格は下がる気配がありません。私が自作パソコンにとてもはまっていた2,3年前(BableTechを開設した頃)にメルカリでGTX 1060 を1万円程度で購入したりしていましたが、現在でも1万5千円程度で割と売れてしまうようです。最新のグラボが高く売れるならまだしも、型落ち品までこうやって影響を受けているのですね。
では一体なぜこのようなグラボの価格高騰が発生してしまっているのでしょうか?
グラフィックボードの価格が高騰している原因を暴く
それではグラフィックボードの価格が高騰している原因、および高騰するまでの流れについて解説していきます。
なお、一部私の偏見などが混じっているため、あまり真に受けないようにお願いします。
三大原因
まずは、大きく分けて三つある原因について紹介します。
①RTX 3000シリーズ新型グラボの圧倒的人気
②新型コロナウイルス
③ビットコインの価格高騰
いろいろ調べたところ、肝となっているのはこの三つですかね。それではこの三つについて、高騰するまでの流れを紹介しながら解説していきます。
高騰するまでの流れ
RTX 3000シリーズ新型グラボ登場
2020年の秋ごろに大きな期待とともにNvidiaから新シリーズ「GeForce RTX 3000シリーズ」が登場しました。
RTX 3000シリーズGPUのラインナップを解説【RTX 3090登場?】
RTX 3000シリーズに関しては登場する前からしつこいくらいに当サイトで噂情報を紹介したり、予想したりしていましたので思い入れがありますね。 ただ、登場時の印象としては「やっぱり新型グラボ高いな~」といった感じでした。
RTX 3000シリーズグラボが大人気で品薄に
当サイトBableTechでもずっとRTX 3000シリーズ関連の記事の閲覧数がずば抜けて多かったのを覚えています。それくらい多くの人がRTX 3000シリーズを待ち望んでいたようで、実際に期待に応えるような高性能さが実現できていたということで大人気。すぐに品薄となってしまいました。この時点で供給が足りなくなりつつあり、すでに価格高騰が始まっています。 コロナ渦でゲーミングパソコンを作ろうとする人が増えたのも、グラボ需要増加の要因といえるでしょう。
コロナ渦で半導体生産縮小
そこで追い打ちをかけるようにして、半導体の生産が縮小されていきました。普通大人気となったら生産力を高めるものですが、コロナ渦で半導体の生産が計画的に縮小されてしまったのです。これは世界的な半導体不足を招き、グラフィックボード市場だけでなく自動車市場なども大きなダメージを受けてしまいました。
そして半導体不足になったことでグラフィックボードの「GPU」の生産力が落ちてしまい、ただでさえ品薄なのにさらに供給を行うことができなくなってしまいました。
ちなみにこの大手半導体メーカー「TSMC」のCEOであるCC Wei氏は、この半導体不足は2022年まで続くなどと述べているようです。
ビットコインの価値が増大、マイニングが人気に
ここで新型コロナウイルスとはあまり関係がないですが、ビットコインの価値が増大しました。タイミングが本当に悪いですね。
調べたところ、ビットコインの価値が増大した要因としては2020年10月19日にIMF(国際通貨基金)がデジタル通貨に関する報告書を発表し、その報告書でデジタル通貨の普及について容認して今後相対的にドルの影響力が弱まるかもしれないなどと指摘していたことが関係あるようです。
つまりビットコインの通貨としての安定性・信頼性がIMFによって認められつつあるため、価値が上がったということですね。
ほかにも、アメリカの大統領選においてデジタル通貨容認派のバイデン氏が勝利したことなども要因になっているといわれています。
つまり、ビットコインの信頼性が高くなり、頼もしい存在になってきたため価値が上がったのです。
そうなると、今度は「マイニング」が流行ってきます。一時期話題になっていましたが、マイニングとは簡単に説明すると、ネット上でのお金のやり取りなどの承認手続きに必要な高度な計算を「グラフィックボード」などの処理装置を用いて行ってあげる代わりに報酬としてビットコインをもらうことができるシステムです。
ただ、ビットコインを誰かからもらうというよりは新たに生成するといった形になるので「掘り当てる(マイニング)」と呼ばれています。ちなみに原則としてビットコインはこの「マイニング」を通じてしか新規発行されません。
そして、マイニングは登録すればだれでもできるのですが、グラフィックボードの性能が高ければ高いほど多くの計算ができるようになり、その分報酬も増えていきます。そういうわけでマイニングのために新型の高性能なグラフィックボードが買い占められたわけです。 その標的となったのはもちろんRTX 3000シリーズです。
以前、一頃マイニングが流行ったときはAMDのRX 500シリーズなんかが多用されていましたね。
ここでさらにグラフィックボードの需要が高まって余計に品薄になったわけですが、主にゲーム用として家庭で用いられるこのRTX 3000シリーズがマイニングのために大量に買い占められるのは”ねらい”とは大きく異なるということでNvidiaがRTX 3000シリーズにおいて、マイニング性能が意図的に下げられました。これは2021年の5月ごろのことです。 そして、その代わりにマイニング専用の、画面出力機構のない新たなグラボがNvidiaから製造されるようになったようです。
しかしながらマイニング性能制限をかけたところで品薄はなおらないままでした。
新型グラボの価格高騰により、型落ち&中古グラボ市場硬直
もう新型グラボがなぜこんなにも高価なのかを説明できるだけの原因はそろったでしょう。しかしなぜ、型落ち&中古グラボの価格まで高いのでしょうか。
それは新型のグラボが極端に高すぎることで型落ちグラボや中古グラボの価格を下げる必要がなくなったためです。新型グラボの価格が型落ちグラボの価格に近いものとなっていたら型落ちグラボは値下げせざるを得ません。これが普通。こうしてどんどん古い製品は安くなっていくわけです。
しかしながら新型グラボが型落ちグラボの価格に干渉しない程度に高価になっていると、型落ちグラボの価格を下げなくても売れるのです。というかむしろ、型落ちグラボの需要が高まって値段が高くなる可能性すらあります。通常、型落ちグラボはそこまで製造されていないので供給も薄くなることも相まってですね。
そして、型落ちグラボが安くならないことで、さらに安い市場である中古市場についても、値下げをする必要がなくなります。こうやってドミノみたいに影響が伝わっていっているわけですね。
そしてメルカリのような市場では市場原理があまり適応されず、グラボの需要が高まったら機敏に出品者が察知して極端に値上げしたりするのでさらに不健全な市場になっていきます。
こうしてどの市場でもグラボが高くなってしまうわけですね。
市場原理

市場原理といえば需要と供給。例えばグラボの例で言いますと
マイニングの流行、自作ゲーミングパソコンの流行、RTX 3000シリーズの流行などグラボの需要が増加したことにより需要グラフが上にシフトしまして(青)
半導体不足などの影響で供給が減少したことにより供給グラフが左にシフトして(赤)、
結果、二つのグラフが交わったところ(均衡価格)が定価よりも上がってしまっている感じです。
解決策&いつまで続くの?
解決策はあるのかといった感じですが、原因が壮大なだけあって個人個人で取り組める方法なんてないでしょう。ですが、今すぐグラボが欲しいのであれば、メルカリなどでたまに出品される安いグラボを狙ってみてはいかがでしょうか。メルカリでは需要や供給に関係なく、出品者が勝手に価格をつけますのでたまにあり得ないくらい安い時があります。そのときはラッキーと思ってすぐに購入ボタンを押しましょう笑
また、グラボ単体で購入しようとしたら高くなってしまうものの、グラボが搭載されているゲーミングパソコンごと購入すれば案外安く購入できたりします。特におすすめなのはパソコン工房さんです。グラボの価格が高騰してもそこまで顕著に影響は受けてないかと思います。

また、いつまで続くのといった感じですが、とりあえず半導体不足はあと2021年いっぱい続くかもしれないので、RTX 3000シリーズが現行品であるうちはもうあきらめたほうが良いのかもしれません。切り替えて、RTX 4000シリーズが2022年に登場してから検討してみるのも一つの手だと思います。
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