今年に行われたWWDC 2019にて、Appleから新型のMac Proが発表されました。最後のモデルは2013年モデルということで、実に6年ぶりの更新になります。この記事では、そんな「Mac Pro 2019年モデル」に搭載されるグラフィックボードの性能について説明していきます。
2019年12月11日追記:
Appleから実際にMac Proが発売されましたので、すべてのオプションや性能について徹底解説する記事をつくりました。こちらをご覧ください。
Mac Pro 2019年モデルのオプションと性能について徹底解説【最速報】
CPUの性能について解説した記事も併せてご覧ください↓
Mac Pro 2019年モデルのCPU性能を全世代のものと比較
この記事を2行で説明すると
- Mac Pro 2019の最高構成ではグラフィックボードは「Radeon Pro Vega 2 duo x 2」、合計4つのGPUをもつ
- 最高構成ではNvidiaのGTX 1080 tiのおよそ5倍の性能
そもそもグラフィックボードとは? 何に使うのか
グラフィックボードとは、描画情報を処理して映像信号にし、モニターに出力するパーツです。
そのため、ゲームなどの高い描画性能を必要とする用途ではグラフィックボードが重要になってきますが、描画処理以外にもなんらかの並列処理を行わせる(動画エンコード等)という使い方もあります。
そして、グラフィックボードの性能が良いというのは、この描画情報を映像信号にする(レンダリング)処理性能が高いということです。
グラフィックボードを搭載していないパソコンというのもよく見かけますが、あれはCPU(コンピュータの頭脳)というパーツ内に小さいグラフィック処理部分が搭載されているため、グラフィックボードを搭載せずに済んでいるだけです。
その場合はとても小さいので、処理性能があまり高くなく、ゲームをしてもカクツクことが多々あるでしょう。

Mac Pro 2019年モデルのグラフィックボードオプション
グラフィックボードの役割について理解したところで、今度はMac Pro 2019年モデルで選ぶことのできるグラフィックボードを紹介していきます。
こちらについては公式ホームページで発表されています。
ですが発表されているのはグラフィックボードの種類のみで、どういう組み合わせのオプションがあるのかはよくわかっていませんが、おそらく以下のようになるのでしょう。
オプション | GPUの数 |
---|---|
Radeon Pro 580X | 1つ |
Radeon Pro Vega II | 1つ |
Radeon Pro Vega II duo | 2つ |
Radeon Pro Vega II duo x 2 | 4つ |
とりあえずグラフィックボードの種類としては以上の通りで、最高構成では実質4つのグラフィックボードを搭載できることになります。”実質”というのは、実はRadeon Pro Vega II duoは見ためでは1つのグラフィックボードなのですが、中にGPU(グラフィックボードの処理装置)が2つ搭載されているためです。
それでは続いてはそれぞれの仕様と、性能比較についてです。
グラフィックボードの性能比較
1、グラフィックボードの仕様
まず最初に、それぞれの仕様を紹介していきます。わかりやすいように、AMD Radeonグラフィックスの現行最上位グラフィックボード「Radeon VII」とも比較してみます。
比較項目 | Pro 580X | Pro Vega II | Pro Vega II duo | Radeon VII |
---|---|---|---|---|
アーキテクチャ | Polaris 20 | Vega 20 | Vega 20 | Vega 20 |
製造プロセス | 14nm | 7nm | 7nm | 7nm |
コア数 | 2304 | 4096 | 8192 | 3840 |
最大クロック | 1200MHz | 1700MHz | 1700MHz | 1700MHz |
GPUメモリ | 8GB | 32GB | 64GB | 16GB |
メモリタイプ | GDDR5 | HBM2 | HBM2 | HBM2 |
TDP | 150W | 475W | 475W | 300W |
補助電源 | スロット給電 | スロット給電 | スロット給電 | 8pin x 2 |
※Pro Vega II duo x 2についてはPro Vega II duo二個分。
以上のような感じです。TDPについてはまだ正式に発表されていないので定かではありませんが、Techpowerupサイトで発見したPro Vega II , Pro Vega II duo のTDPは共に475Wとなっていました。
そしてPro 580X以外はアーキテクチャはすべてVega 20となっていて、最上位カードの「Radeon VII」と同じになっています。
本当は最近、Vega 20よりも新しく「Navi」という名前のアーキテクチャも登場していて、次の最上位カードが「Navi 20ベース」になると思われるため、Vega 20は若干の型落ち感があります。
製造プロセスはPro 580X以外すべて7nmとなっていて、ライバル社の「Nvidia」のいかなるグラフィックボードよりも高密度な設計となっています。
そしてメモリですが、Pro 580X以外はHBM2というタイプのものが使われています。とても帯域幅が広く、結果的にデータ転送速度がすごく速いものになります。AI処理にも向いているメモリだそうです。
容量についてはPro Vega II duoで衝撃の「64GB」です。
Pro Vega II duo x 2の構成(最高構成)にしたら合計128GBということになりますね。
断言しますが、通常のユーザーには絶対に128GBも必要ありません。
そして給電方法については結構興味深く、Mac Pro 2019年モデルではすべてスロットから給電するそうです。
通常のPCI-e x 16スロットから給電できるのは75Wまでですが、それ以外にも独自規格で給電用コネクタを設けているので最大で500W程度まで給電できます。
配線がごちゃごちゃにならなさそうで良いですよね。

2、グラフィックボードのパフォーマンス
続いてはそれぞれのグラフィックボード構成でのパフォーマンス比較です。
グラフィックボードというのは、ゲーム性能・計算性能いろいろな観点があるとは思いますが、今回は「単精度浮動小数点演算性能」を目安にパフォーマンスを算出します。
比較用に、Radeon VII , それから最新「Navi 10アーキテクチャ」採用のミドルレンジグラフィックボード「RX 5700XT」 , Nvidia社の現状最上位グラフィックボード「TITAN RTX」 , それからGTXシリーズのハイエンドモデル「GTX 1080 ti」も追加しました。
Chart by Visualizer
※多少のボトルネックを考慮しています
結果はこのようになりました。
Pro Vega IIはほぼ同じ構成のRadeon VIIと比べて多少処理性能が上がっていて、duoは単純に二倍となっています。
最高構成ともなるとグラフィックボードだけで1000Wくらいの電力を使いそうな勢いですが、その性能は間違いないでしょう。
そしてグラフィックボード本体にはThunderbolt 3端子(USB Type-C)がついていて、最新のVRゲームも快適にプレイすることができそうです。
なんなら同時に二人でVRゲームをプレイすることだって余裕なんじゃないですか。
いつまで色褪せない? この性能
最高構成で500万円を超えると言われている、この新型Mac Proですが、グラフィックボード的にはいつまで色褪せずに性能を発揮することができるのでしょう。
おそらく、10年間くらいはハイエンドという立ち位置を守ることができるでしょう。
ただし、10年間も経てばアーキテクチャがかなり進化していると思うので、おそらくワットパフォーマンス(電力あたりの性能)は最悪になっていることでしょう。
第二世代スケラーブルプロセッサのXeon-W32xxシリーズCPUと併せると、もはやヒーターですよね。電力の消費が半端なさそうです。
この新型Mac ProのCPU性能については以下の記事で紹介しています。