Intelは主にプロセッサを製造する会社ですが、実はその一方でストレージ部門も手掛けていたりします。SSDなどのNANDフラッシュメモリ市場においてはその存在はまだ小さいですが、SSDを超えたストレージ「Optaneメモリ」の開発も行っています。
そして今Intelが開発している次世代Optaneメモリは皮肉にも、まだIntelのCPUがサポートしていない「PCIe 4.0」に対応するという情報が確認されました。この記事ではOptaneメモリとは何なのか説明しつつ、次世代のOptaneメモリについて解説していきます。
この記事を2文で説明すると
- Intelの次世代Optaneメモリは、まだIntelのCPUがサポートしていない「PCIe 4.0」をサポートするということが確認された
- 発売されるのはサーバー向けIcelake CPUが登場する2020年後半頃になる見込み
そもそもOptaneメモリとは?
Optaneメモリはその立ち位置が微妙なためあまり知られていません。実は私も、この記事のためにOptaneメモリについて本気で調べるまでは名前しか知りませんでした。
そこで最初に、Optaneメモリとはそもそもなんなのかについて解説していきます。
Optaneメモリとは、不揮発性の高レイテンシメモリである
ここでいきなり難しい用語が出てきました。「不揮発性」というのは、電力供給をやめても内部データが残るという意味で、普通のHDDやSSDも不揮発性ということになります。一方でメインメモリと呼ばれるDRAMについてはコンピュータの電源を切ると内部データも一緒に消えるため、揮発性ということになります。
そして、Optaneメモリは不揮発性なので通常のHDDやSSDなどのストレージの仲間ということになり、単純に記憶装置として使うことができるということになります。
そして「レイテンシ」とは、簡単に言えばメモリの応答速度です。DRAM(メインメモリ)はHDDやSSDなどのストレージと比べて比較的容量が少ないですが、レイテンシが非常に高いので「メインメモリ」という用途に向いています。
そしてOptaneメモリも、DRAMには劣るものの、HDDやSSDに比べるとレイテンシが非常に高いです。
つまりは、レイテンシの高さに関して言えばDRAMに近い立ち位置です。
用途
ではどんなことに使われるのでしょうか。使われ方は大きく分けて3つあります。
1.普通にストレージとして
Optaneメモリは特殊なテクノロジーによって製造されていますが、本質的な部分としてはSSDと似たようなものですので、単にストレージとしても使われます。
通常のSSDに比べて容量当たりの価格が高いですが、その分高寿命で高速となっているので、一部のデータセンターで採用されています。
接続方式としてはU.2やM.2等です。
2.HDD等のキャッシュメモリとして
一部の企業はOptaneメモリをフルでストレージとして採用していたりしますが、私たちにはOptaneメモリでフルでストレージを組むなんてコストのかかることができません。そこで、大容量のHDDのキャッシュメモリとして組み込まれることがしばしばあります。もちろんマザーボード等が対応している必要がありますが、Optaneメモリをキャッシュメモリとして組み込むと、HDDがまるでSSDであるかのような快適な動作になります。
一般的にはマザーボード上のM.2スロットが使われるので、M.2 SSDと似たようなものでしょう。
3.DRAMとして
Optaneメモリには、DRAMの形をしたDDR互換のものが存在します。
レイテンシが非常に高いため、DRAMと同じようにDDRスロットに取り付ければメインメモリの大容量化が低コストでできるのではないかという考えで生まれました。というのも、Optaneメモリは容量当たりの価格がDRAMのおよそ半額となっているので、多少レイテンシが下がるものの、メインメモリの大容量化には大きく貢献できます。また、不揮発性ですのである種のデータセンターからは一定の需要があります。
というように、データセンターを中心に様々な用途で使われています。

次世代Optaneメモリの実態
従来のOptaneメモリには「3D XPoint」という技術が使われています。
そして第二世代目となる、次世代のOptaneメモリにはそのまま「第二世代3D XPoint」という技術が搭載されます。
残念ながら第二世代3D XPointについて技術的な仕様はまだ発表されていませんが、期待できることとしては以下の二つがあります。
1.容量当たりのコストが30%前後低減
DRAMとNANDフラッシュ(通常のSSD等)の間に位置するOptaneメモリですが、DRAMとして考えたら安いものの、やはりストレージの一部として考えるとまだまだコストが高いように思えます。
この手のテクノロジーの開発でまず優先されるのは「コスト低減」です。ということで第二世代Optaneメモリではより低コストになってちょっと高いSSDくらいの位置に立つことができるようになると期待されます。具体的な数値をいいますと、従来から30%前後のコストダウンといったところです。
参考:https://eetimes.jp/ee/articles/1906/05/news031_2.html
2.PCIe 4.0に対応
そしてこの記事のタイトルにも含まれていた「PCIe 4.0への対応」、これが第二世代Optaneメモリの注目すべきポイントです。
もちろん、まだIntelから正式に発表されたわけではないので不確かな情報ではあるのですが、Tom’s hardwareの情報によりますとIntelがサンプルとしていくつかの第二世代Optaneメモリを提供していて、それらがPCIe 4.0をサポートしているとのこと。
AMDからPCIe 4.0をサポートした第三世代Ryzen CPUが発売されてからというものの、PCIe 4.0接続を可能とするSSDメモリは増えてきています。そんな中ですから、NANDフラッシュの上に位置しているOptaneメモリがPCIe 4.0をサポートするというのは当然のことでしょう。
ですが少し引っかかることがあります。
この新型Optaneメモリがいつ登場するのかはわかりませんが、とりあえず今の時点でIntelはまだPCIe 4.0をサポートしているプロセッサを製造していません。
つまり、第二世代Optaneメモリを開発したところでそのプラットフォームはAMD製のCPUが搭載されたコンピュータになってしまうかもしれません。
そうなると、もはや何のためにPCIe 4.0をサポートするのかわかりません。
ただ、Optaneメモリは別にCPUの売り上げを伸ばすために開発されているものではありませんので、あくまでもIntelのCPU部門とはまた別の部門です。なので少し考えすぎかもしれませんね。
しかしながら、プロセッサを中心に開発しているIntelが、ストレージ部門で一番最初にPCIe 4.0をサポートさせてしまうのは少し奇妙な話です。
いろいろな説がありますが、Tom’s hardwareでも述べられている通り、以下の説が濃厚です。
CPUよりも先にOptaneメモリがPCIe 4.0をサポートするのか?
サンプルが出ているわけですし、おそらくIntelはすでにPCIe 4.0環境を構築する技術を習得しているのでしょう。しかし問題なのは、このOptaneメモリをいつ発売するかです。先ほども言ったように、IntelのPCIe 4.0にサポートしているCPUが登場する前に第二世代Optaneメモリが登場しようものなら、その接続先の大部分はAMD製のCPUが搭載されたコンピュータになることでしょう。
しかしあくまでもサンプルが提供されただけで、まだ第二世代のOptaneメモリは噂段階の話です。発売されるのが早くとも2020年の後半になるとしたら、その前にサーバー向け「Icelake」CPUが登場するかもしれません。
Icelakeといったら第十世代モバイル向けCoreシリーズのイメージですが、実は2020年の後半にはIcelakeのサーバー向けCPUも登場することが、Intelから発表されています。
2020年度のIntelのサーバー向けCPUはこう進化する【PCIe 4.0サポート?】
このCPUについては以上の記事をご覧ください。
そしてこのサーバー向けIcelakeプロセッサは、IntelではじめてPCIe 4.0をサポートすると期待されています。
そう考えると、この第二世代Optaneメモリを発売するタイミングはサーバー向けIcelake CPUが登場した後になるでしょう。
参考記事:https://www.techspot.com/news/83402-intel-prototyping-pcie-40-ssds-but-needs-amd.html
https://www.tomshardware.com/news/intel-has-pcie-40-optane-ssds-ready-but-nothing-to-plug-them-in-to