第三世代デスクトップ向けRyzen CPUが発売され始めたのは2019年の7月のことでした。その時に「Zen2」という7nmプロセスを採用したアーキテクチャが世の中に出回るようになりましたが、Zen2を用いた、第三世代ハイエンドデスクトップ向けの「Ryzen threadripper」についての話が出始めたのは最近のことです。
そしてこの度、第三世代Ryzen threadripperのうちの最高モデル「Ryzen threadripper-3990X」が発表され、2020年2月8日に発売されましたのでその仕様を紹介します。
※以下、Threadripperのことを「TR」と略すことにします。
この記事を1文で説明すると
- 第三世代Threadripperの最上位モデル「3990X」は64コア128スレッドで、マルチコアパフォーマンスが更に上昇すると期待できるが、これを使いこすことは大半の人はできないため、あまり実用性は無い。
第三世代Ryzen TRの仕様まとめ
第三世代Ryzen TRの3960Xおよび3970Xについてはもうすでに発表されています。そしてこの度最高モデルの3990Xの情報が明らかになったため、ここでは前身となる第二世代のTRの仕様と比較して、第三世代Ryzen TRの仕様をすべて紹介します。
型番 | コア/スレッド | クロック数 | L3キャッシュ | PCI-e | RAM | TDP | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
TR 3990X | 64/128 | 2.9 / 4.3 | 256MB | 128 Gen 4 | DDR4-3200 | 280W | 3,990ドル |
TR 2990WX | 32/64 | 3.0 / 4.2 | 64MB | 64 Gen 3 | DDR4-2933 | 250W | 1,799ドル |
TR 3970X | 32/64 | 3.7 / 4.5 | 128MB | 88 Gen 4 | DDR4-3200 | 280W | 1,999ドル |
TR 2970WX | 24/48 | 3.0 / 4.2 | 64MB | 64 Gen 3 | DDR4-2933 | 250W | 1,299ドル |
TR 3960X | 24/48 | 3.8 / 4.5 | 128MB | 88 Gen 4 | DDR4-3200 | 280W | 1,399ドル |
TR 2950X | 16/32 | 3.5 / 4.4 | 32MB | 64 Gen 3 | DDR4-2933 | 180W | 899ドル |
参考記事:ついに登場、AMD第三世代Threadripperを徹底解説【32コア】
https://wccftech.com/amd-ryzen-threadripper-3990x-64-core-cpu-2020-launch-confirmed/
TR-3990Xは2990WXの後継、3970Xは2970WXの後継であることがネーミングから明らかになりますが、3960Xの前身については不明です。また、3980Xも登場すると言われています(48コア96スレッド)
そして最も注目すべきなのはそれぞれのコア数、キャッシュサイズについてです。
後継にあたるモデルはそれぞれ前身モデルよりもコア数、キャッシュサイズが多くなっています。特に、最上位モデルとなる3990Xでは64コア128スレッドというまさかのコア数です。
このコア数はハイエンドデスクトップ向けCPUの中ではもちろんのこと、データーセンター向けCPUを含めても最大級になります。実際に現時点でのデータセンター向けCPUにおける最大コア数を保有しているCPUはAMDの第二世代EPYCプロセッサの最上位モデルになります。
スレッド数が多いことでマルチ処理のパフォーマンスが上がることは確かですが、さすがに64コア128スレッドともなるとそれを使いこなすのは不可能に近いです。2990WXの「32コア64スレッド」でさえ、それをフル活用するのは相当難しいとされてきましたからね。そしてクロック数については2990WXよりも最大で100MHz上昇しているものの、比較的抑えめとなっています。
これはコア数の多さが影響しているのでしょう。
ですがZen2 7nmプロセスの恩恵を受けたのでしょうか。3990XのTDPは280Wとなっていて、64コア128スレッドCPUとしてはまだ抑えられている方です。
その調子で価格まで抑えてもらいたいものですが、3990Xだけに3,990ドル(実際は3,987ドル)で発売されました。
そして日本での販売価格としてはパソコン工房での価格がおよそ50万円となっています。
性能はどうなる?
まだ発売されたばかりなので性能を確定することはできませんが、Zen2アーキテクチャ(7nm)の採用によるクロック数の効率的な上昇、コア数の増加などがシングルコアパフォーマンス及びマルチコアパフォーマンスの上昇に貢献してくれるに違いありません。
予想では、シングルコアパフォーマンスにおいて3990Xは2990WXよりも最高で1.5倍以上の優秀さを誇ると思います。ただし、コア数が増えたことにより、クロックアップがスムーズにできなくなってしまうという懸念点もあるため、シングルコアパフォーマンスとしては期待通り上昇しない可能性が高いです。
そもそもTRシリーズではあまりシングルコアパフォーマンスは重視されていないと思いますので、ゲーム等には不向きでしょう。
シングルコア性能を考慮すると、3990Xのゲーミング性能はIntel Corei7-9700Kよりも下がってしまいそうです。
ゲーミング性能においてはやたらめったらコア数が多い方が良いわけではないですからね。
ですがマルチコアパフォーマンスは想像を絶するものになると思います。
もしもすべてのコア/スレッドを効率的に利用することができるならば、動画のエンコード、それからデータセンターのようなサーバー的な用途、物理演算等において非常に優秀なパフォーマンスを発揮するでしょう。ですが先ほども説明したように、これらのコアをフル活用するのはまず無理です。
買いですか?
「買い」か「買いじゃない」かできかれたら、「買いじゃない」です。
コストパフォーマンスが高とかそういう話をする以前に、このような仕様のCPUを持つ意味がほとんどありません。
本当にこのようなパフォーマンスが必要な人にとっては買いなのかもしれませんが、おそらく購入する大半の人はハイエンドデスクトップ向けプロセッサをこよなく愛するマニアの方々でしょう。
しかし一応説明しておきますが、実用的ではありません。
ただし、それが実用的でなくたとしてもブログのレビューにしたりYoutubeでレビューをしたら世の中からかなり注目が集まると思います。「誰も買わないようなCPU」として買ってみるのはアリかもしれませんね。
参考記事:https://wccftech.com/amd-ryzen-threadripper-3990x-versus-xeon-platinum-8280-cpu-benchmarks/
https://www.amd.com/ja/products/cpu/amd-ryzen-threadripper-3990x