少し前に当サイトで、AMDの第三世代Ryzen CPU(正確にはグラフィックスが内蔵されているため、APU) についての情報を投稿しました。
第三世代Ryzen APU情報【Ryzen5-4400G等】
この記事では「第三世代 Ryzen APU」と記述されていますが、Ryzen APUにはデスクトップ向け「G」付きモデルとモバイル向け「U」「H」付きモデルの二つがあります。しかしこの記事では主にデスクトップ向けについて言及しました。
そこで今回、第三世代Ryzen APUのモバイル向けについての情報を主に紹介していきます。
なお、2020年1月にAMDから正式に発表されたため、この記事の内容を正式な内容に改めました。
この記事を2行で説明すると
- 第三世代モバイル向けRyzen APU(Ryzen-4000)では全体的にコア数が増加し、Ryzen9シリーズが追加されるとともに内蔵グラフィックスが強化される
- 内蔵グラフィックスのアーキテクチャは一世代進化するが、それでもIntelの第10世代「Icelake」シリーズプロセッサのグラフィック性能を上回らないと予想
第三世代モバイル向けRyzen APUの特徴
主な仕様について紹介する表をお見せしても良いのですが、先にこのAPUの特徴について文章で説明したいと思います。
1.型番は「4000番台」
非常にややこしい話ですが、第三世代Ryzen APUの型番は4000番台になります。それだったら「第四世代Ryzen APU」という名前でもいいじゃないかという感じですが、CPUのアーキテクチャについては第三世代Ryzen CPU(Ryzen5-3600等)と同じ「Zen2」ですので、実質的には第三世代のCPU(APU)になります。
第三世代Ryzen APUの発売は第四世代Ryzen CPUよりも早めになっていますが、第四世代Ryzenが登場したと勘違いしないようにしましょう。
2.7nmプロセスルールを採用
第三世代Ryzen APUはZen2ベースのCPUにRadeon RX Vegaグラフィックスが統合されている「APU」です。そのため、CPU部分についてはZen2アーキテクチャを採用している「第三世代Ryzen CPU」とほぼ同じと言って良いでしょう。
そのため、同じTSMCの7nmプロセスが採用されます。第二世代Ryzen APU(Ryzen-3000)については12nmプロセスが採用されていたので、第三世代への進化は非常に大きいものになります。そして、コアあたりのパフォーマンスも非常に上昇し、よりゲーム用途に向くと思われます。
3.Ryzen9シリーズが登場
Intelが第九世代から急にCorei9シリーズを登場させたのを追いかけるように、AMDの第三世代Ryzen CPUではRyzen9シリーズが加わりました。
数字のごとく、Ryzen7よりもさらに高いパフォーマンスを保有するハイエンドシリーズになります。先ほども言いましたが、第三世代Ryzen APUは基本的にZen2アーキテクチャのCPUと同じですので、第三世代Ryzen CPUと同じように、Ryzen9シリーズが登場します。
デスクトップ向けAPUでは例年通りRyzen5までしかないようですが、モバイル向けラインナップではRyzen3,5,7,9全てのシリーズが登場します。
詳しい仕様については後ほど紹介します。
4.内臓グラフィックスが強化
第三世代Ryzen CPUと同時にAMDから発表されたのは「Navi」アーキテクチャを採用した「Radeon RX 5700シリーズGPU」です。
こちらでは新しい7nmプロセスが使われ、構造も一新されたということなので次世代APU、つまりは第三世代Ryzen APUシリーズの内臓グラフィックスとしてNaviアーキテクチャのもの搭載されるのではないかと期待されていました。
つまりはRyzen9-4900H with Navi 10みたいな状況になると期待されていたわけです。ですが情報によると、第三世代Ryzen APUでは例年通り内臓グラフィックス向けにVegaアーキテクチャが使われるとのこと。
ただし、VegaはVegaでも例年のアーキテクチャよりも一世代進化したVegaアーキテクチャになります。それは、現世代ウルトラハイエンドGPU「Radeon VII」に採用されている「Vega 20」アーキテクチャがベースになるということです。第二世代VegaアーキテクチャということでNaviアーキテクチャの一歩手前になるわけですが、おそらく7nmプロセスを採用した内蔵グラフィックスになるのでしょう。
この後具体的なラインナップについて解説していきますが、CU(コンピュート・ユニット)の数は減少するものの、アーキテクチャが進化するのでグラフィック性能自体は向上すると期待されています。
なんでここまで内臓グラフィックスが強化されるのかといいますと、理由は単純でライバルのIntelが第十世代モバイル向けCoreシリーズの内臓グラフィックスを大幅に強化してきたからです。
グラフィックボードがいらない時代は到来してきている!【生まれ変わった内蔵グラフィック性能】
デスクトップ向けCPUにおいては、外付けグラフィックボードでグラフィック性能はなんとでもなるのですが、ノートパソコン等については外付けグラフィックボードを搭載するのが非常に困難になってくるので、CPU内臓グラフィックスが重要になってきます。それを見込んでIntelがモバイル向け第十世代CPU「Icelake」のグラフィック性能を向上させたわけですが、AMDもそれに便乗している感じでしょう。
5.最大で8コア16スレッド
第二世代モバイル向けRyzen APUにおいては最大で4コア8スレッド(Ryzen7-3750H)となりましたが、第三世代モバイル向けRyzen APUについては最大で8コア16スレッドをサポートします。
Ryzen9シリーズはもちろんのこと、Ryzen7シリーズについても一部が8コア16スレッドになります。
デスクトップ向けRyzen7も8コア16スレッドなので、デスクトップとほぼ同じ構成ということになります。7nmプロセスを採用するからできることなのでしょう。
6.発熱量・消費電力の増加
第二世代の最高TDPが35W(Ryzen7-3750H)だったのに対して第三世代では45Wになります。
単純に消費電力が増えるという見方もできるかもしれませんが、消費電力が増えるというよりは発熱量が増える方なのではないかと思います。
第三世代モバイル向けRyzen APUの仕様一覧
2020年1月にAMDが正式に発表しましたので、租のラインナップを解説します。
ここでは比較用に第二世代モバイル向けRyzen APU一覧も載せています。
仕様一覧表
モデル | アーキテクチャ | コア・スレッド数 | TDP | 内蔵グラフィックス |
---|---|---|---|---|
Ryzen3-3200U | Zen+ 12nm | 2/4 | 15W | Vega 3 |
Ryzen3-3300U | Zen+ 12nm | 4/4 | 15W | Vega 6 |
Ryzen5-3500U | Zen+ 12nm | 4/8 | 15W | Vega 8 |
Ryzen5-3550H | Zen+ 12nm | 4/8 | 35W | Vega 8 |
Ryzen7-3700U | Zen+ 12nm | 4/8 | 15W | Vega 10 |
Ryzen7-3750H | Zen+ 12nm | 4/8 | 35W | Vega 10 |
Ryzen3-4300U | Zen2 7nm | 4/4 | 15W | Vega 5 |
Ryzen5-4600U | Zen2 7nm | 6/12 | 15W | Vega 6 |
Ryzen5-4500U | Zen2 7nm | 6/6 | 15W | Vega 6 |
Ryzen5-4600H | Zen2 7nm | 6/12 | 45W | Vega 6 |
Ryzen7-4800U | Zen2 7nm | 8/16 | 15W | Vega 8 |
Ryzen7-4700U | Zen2 7nm | 8/8 | 15W | Vega 7 |
Ryzen7-4800H | Zen2 7nm | 8/16 | 45W | Vega 8 |
Ryzen9-4900H | Zen2 7nm | 8/16 | 45W | Vega 10? |
2020年1月にAMDが正式に発表した情報です。Ryzen9-4900Hについてはまだ不確かです。
Ryzen7には800番台が新たに現れていますが、これは第三世代Ryzen CPUのRyzen7シリーズと同様の結果です。(Ryzen7-3800Xが新たに追加された)
そして、Ryzen9についてはU付きモデルは存在せず、ハイエンド向けH付きモデルのみです。
TDPは最大45Wとなっていますが、全体的にコア数が増えています。内蔵グラフィックスについてはCU(コンピュート・ユニット)の数こそ少なくなっているものの、先ほど説明した通りアーキテクチャが進化しているのでもはや前のVegaアーキテクチャと一緒にしてはいけません。
内蔵グラフィックスの性能
内蔵グラフィックスの性能について、新しくなったVegaアーキテクチャを考慮しましたが、どうもIntelの第十世代モバイル向け「Icelake」プロセッサの最上位内蔵グラフィックス「G7」を抜ける気がしません。
そして外付けグラフィックボードとして最もポピュラーだった「GTX 1050 ti」の性能には全く追いつきそうにありません。
そして、このまま進化していけばZen3をベースにした第四世代Ryzen APU(Ryzen-5000)についてはNaviベースの内蔵グラフィックスが搭載されると考えられているので、そこで内蔵グラフィックス性能が見違えるほど上昇するかもしれませんね。
ただ、そのころにはIntelから第12世代内蔵グラフィックス「Xe」が登場しているころなので、やはりIntelの内蔵グラフィックスには追いつきそうにありません。
すみませんamdの公式発表で4800Uと1065G7の比較で内臓GPU勝ってませんでしたっけ?
まぁメモリ帯域でいくらでも小細工できますが
ちなみに興味深いことにzen2モバイルとタイガーレイクはダイサイズが近くてintelの10nm≒tsmcの7nmとするとamdはcpuが8コアに対しタイガーレイクは4コアと言われてるのでその分内蔵GPUは期待できそう
その通りですね。たしかにAMDの公式発表では第三世代Ryzen APUの内蔵グラフィックスの方が優秀だと紹介されていたかもしれません。
ただ、まだ出荷が開始されたわけでもないので、今後実際にベンチマークテストが行われたときにまた記事を更新したいと思います。