Intelのグラボ「Iris Xe Max」とは一体何者なのか【何に使うの?】

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前々から噂されていたことがついに実現したようです。Intelが新しい世代のグラフィックアーキテクチャ「Xe(第12世代)」に取り組んでいたという噂は結構前からあり、それは事実でした。 ですが巷ではその上、そのグラフィックスが従来のようにCPUの内蔵グラフィックスとして採用されるだけでなく、NvidiaやAMDが製造しているようないわゆる「外付けグラフィックボード」としても登場するのではないかと噂されていました。

そして実際にIntelから正式に「Iris Xe Max」という名前のグラフィックボードが発表されましたので、一体どのような仕様なのか、何に使うのかについて解説していきます。

 

 

この記事を2文で説明すると

  • Intelが20年ぶりに出した外付けGPUである「Iris Xe Max」は仕様自体はTiger Lake CPUの内蔵グラフィックスに似ているものの、より高い動作周波数独立したメモリなどを持ち合わせていて高品質なものになっている
  • Iris Xe MaxはIntelの最新CPUが搭載されているモバイルコンピュータに組み込むことでCPUとうまく連携し、エンコード処理AI処理などをより円滑に行うことができる

Intelにとっての「グラフィックボード」

“グラフィックボード”という表現自体が何となくややこしいですが、ここでいうグラフィックボードというのはいわゆるグラボであり、つまりCPUに内蔵されている小さいものではなくてCPUのパッケージとは別に、それ専用のパッケージを持っているもののことをさします。 例えばNvidiaが手掛けているGeForceシリーズグラボでは、最近ではRTX 3090などの次世代のウルトラハイエンドグラボも登場していて現在のCPU内蔵グラフィックスとはかけ離れた性能を保有しています。

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このように外付けのグラフィックボードというのは通常CPUの内蔵グラフィックスよりもはるかに性能が高くて、最新の重ためのゲーム等をプレイする人が主に利用しています。一方でCPUの内蔵グラフィックスは最近のものは割と高性能ではあるものの、やはり、あくまでも「動画などの映像をうつすため」程度のものとなっていたりします。

そしてIntelが長年開発してきたのは同社のCPUに内蔵するためのGPUで、特に外付けグラボに注力していたわけではありません。そういうわけで、Intelが今回から本格的にグラボ市場に足を踏み入れたというのは非常に興味深い話になります。 ただ20年くらい前に一度Intelもいわゆる「グラボ」を開発してたことがあって、「Intel 740」という名前でした。なお、こちらはAMR Radeonの前身である「ATI」やNvidiaなどが出していたGPUに比べて優秀といえるものでもなかったのでグラボ市場をうまく渡り歩くことができませんでした。

 

そういうわけで、Intelと外付けグラボというのはここ数十年封印されていた関係になります。

 

 

Iris Xe Maxの仕様

そしてこの度Intelが発表したグラボが「Iris Xe Max」と呼ばれるものになります。前々からこのグラボについて噂されていましたが、その時は開発コード「DG1」として親しまれていました。 こちらの仕様についてざっと確認していきましょう。

 

 Iris Xe MaxCore i7-1185G7GTX 1650
アーキテクチャXeXeTuring
製造プロセスIntel 10nm SuperFinIntel 10nm SuperFinTSMC 12nm
コア数(実行ユニット数96基)(実行ユニット数96基)896コア
最大動作周波数1650 MHz1350 MHz1665 MHz
VRAMLPDDR4X-4266
4 GB
LPDDR4X-4266
(CPUと共有)
GDDR5
4 GB
TDP25 W(CPUと共有)75 W

 

以上のようになっています。一番左が今回発表されたIris Xe Maxグラボで、その右が、同じXeアーキテクチャを内蔵グラフィックスに採用している第11世代の「Tiger Lake」CPUの内蔵グラフィックスで、一番右がNvidiaが2019年に発売したローエンド(下位モデル)の外付けグラボ「GTX 1650」です。

XeグラフィックスについてはCPUで採用している10nmプロセスが利用されています。ちなみにNvidiaは最近発表したRTX 3000シリーズGPUで8nmプロセスを採用しています ※なお、半導体メーカーが異なるので一概には比較できません

そして処理ユニットの数としては驚いたことに、Iris Xe Maxは内蔵グラフィックスと全く同じになっています。この時点で分かることとしては、Xe Maxは明らかにNvidiaでいう「RTX 3090」などのハイエンドGPUと競う相手ではないということです。 IntelがそのようなハイエンドGPUを開発できるのか否かは別として、少なくともこの「Iris Xe Max」では内蔵グラフィックスに近い手ごろさ、のようなものが意識されているでしょうか。

ただし動作周波数は高めになっています。これはCPUと一緒にパッケージングすることなくある程度のスペースを確保できることや、消費電力が高めになっていることが貢献しているかと思います。そしてこの最大動作周波数はNvidiaのGTX 1650の「1665 MHz」に限りなく近い数値となっています。

VRAMについては、内蔵グラフィックスはCPUと共有している、つまりパソコンのメインメモリが利用される形になっていますが、Iris Xe MaxではdGPU(外付けグラボ)ということで独立してVRAMをもっています。メモリの速度としてはLPDDR4X-4266となっていて、内蔵グラフィックスと同じになっています。NvidiaのGPUのようにGDDRシリーズが採用されているわけではないようです。

一方でNvidiaのGTX 1650も容量は4GBですが、メモリの種類としてはGDDR5となっています。

そして最後にTDPについてです。

 

TDP

Thermal Design Powerの略。PCのシステム設計者に対して電源および冷却に関する指標を示すための数字。消費電力の指標にもなる。

 

TDPはおおまかな消費電力の指標になりますが、Iris Xe Maxでは25Wと、他のグラフィックボードに比べると非常に低い値になっています。内蔵グラフィックスはともかく、外付けグラフィックボードに関してはローエンドのものでも50W以上のものが多いです。実際に、比較しているNvidiaのGTX 1650はローエンドのGPUですが、TDPは75Wとなっています。

IntelのCPUをみていると内蔵グラフィックスが搭載されていない「F付」モデルのTDPが搭載モデルに比べて大きく低いわけでもない、というかむしろ全く変わらないまであるので、おそらく従来の内蔵グラフィックス自体は25Wも電力をさかれていないのかもしれません。 そのため、Iris Xe Maxの「25W」という値は、内蔵グラフィックスから派生したGPUとしては十分なTDPといえるのかもしれません。

 

 

Iris Xe Maxでできること

正直なところ、NvidiaのRTX 3090のようなウルトラハイエンドGPUで、かっこいい見た目をしているグラボだとすぐに「最新のゲームを快適にプレイするためにゲーマーとかが使うんだろうなー」というのがわかりますが、先ほどから紹介しているようにIntel Iris Xe Maxの性能はそれらのハイエンドGPUと比べたら決して良いとは言えません。

そのため、一体どのような場面で活躍するのか? どのようなことができるのかわかりにくいという問題があります。

 

1.活躍する場所

とりあえずどのような機器で活躍するのかについてですが、このIris Xe Maxはデスクトップパソコンのように広いスペースがあり、より性能の高いパーツを組み込むもの向けというよりは、スペースが限られていて消費電力なども抑制する必要のある「モバイル機器」、つまりはノートパソコン等で活躍します。

そしてノートパソコン上に組み込むことで、パソコン上のIntelのCPUなどとうまく連携することができます。Nvidiaが製造しているゲーム用のGPUなどはそれ単体で機能しているイメージですが、IntelはCPUもかなり濃厚に手掛けているということで、このようにCPUとうまい具合に連携させることができます。 というかこれまでに内蔵グラフィックスという形でCPUとGPUのコネクションを研究してきたわけなので、今回それを単にセパレートしただけの話です。

 

マザーボード上に組み込まれているイメージ

 

しかしながらIris Xe Maxは単体でメモリなどを保有していて、内蔵グラフィックスに比べるとある程度独立している上に、熱問題などにおけるCPUからの干渉が少なくなっています。 イメージでいうと、GPUの隣にGPU専用のDDR4メモリがささっている感じでしょうか。

上の画像では手前にGPUが込みこまれていて、そこに合計4GBのメモリが隣接している様子が描かれています。 そして奥の方には何やら二つのダイをもちあわせている装置が埋め込まれています。こちらがIntelのCPUです。

 

2.CPU内蔵グラフィックスとの連携

 

Iris Xe MaxとCPUが連携しているイメージ

何となく先ほど説明しましたが、Iris Xe Maxが本当に輝くのはそれ単体だけでいるときではなく、同じパソコン上に第11世代「Tiger Lake」シリーズなどのCPUが搭載されている時でしょう。

もちろんこのCPU側にも同じ「Xe」アーキテクチャを採用している内蔵グラフィックスが搭載されているわけで、この時二つのGPUが共存することになります。この二つをうまい具合に組み合わせることによって二倍どころか、更に高いパフォーマンスをも実現できるようになるとIntelは主張しています。

2つのGPUといったらNvidiaの「SLI」を思い出しますが、おそらくそれよりも更に効率的に作用するでしょう。 この組み合わせテクノロジーのことを「Intel Deep Link Technology」というそうです。

 

SLI

Scalable Link Interfaceの略。Nvidiaが製造しているGPUを複数同時に動作させるシステムの事を指す。 処理性能を上げることができる。

 

3.動画のエンコード・AI処理

それで実際にこのテクノロジーを利用して何ができるのかという話ですが、GPUの数を倍にすることで単純に、動画のエンコードをより高速なものにすることができます。 動画のエンコードが高速になるといわれても、それはクリエイターだけが喜ぶだろうと考える人はいるかもしれませんが、動画視聴やゲーム内などいたるところで動画のエンコード処理は行われていたりしますので、GPUの最も基本的な処理と言えます。

また、写真を高解像度にできる「Topaz Labs」の「Gigapixel AI」による処理が最大で7倍程度まで高速になるとのことです。 それはGPUが2基あるから当然だろうと思うかもしれませんが、性能は2基分以上あっても電力効率は更に高くなるとのことです。

 

4.ゲーム

ゲームについてはそこまで主張されていませんので専らゲーム向けのグラフィックボードというわけではなさそうですが、もちろん内蔵グラフィックス利用時よりもゲーム性能が向上するでしょう。動作周波数が比較的高いため、高負荷をかけても力強く働いてくれそうです。 IntelはTiger Lake CPUに搭載されているXeアーキテクチャの内蔵グラフィックスについてもそこそこゲームができるようなことを主張していましたので、こちらのIris Xe Maxについては更に期待できそうです。 なお、期待できるといってもNvidiaのGTX 1650などのローエンドGPUと同じ程度かそれ以下でしょう。

 

 

Iris Xe Maxの歩み

Intelの紹介をきいていると、Intelはこのような外付けGPUをノートパソコンなどのモバイル機器に組み込み、CPU等と連携することにご好意を抱いているようです。 今後登場するかもしれないと言われている「DG2(コードネーム)」についてはもっとヘビーなものになり、NvidiaのウルトラハイエンドGPUと互角に渡り合えるようになるだろうと言われていますが、少なくともこのIris Xe Max(DG1)系列については今後もモバイル機器の中で縁の下の力持ちになるのでしょう。

 

Iris Xe Maxの紹介動画については以下をご覧ください。

 

 

参考記事:https://gigazine.net/news/20201102-intel-iris-xe-max/







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