以前にYoutubeで「HDDを分解して遊んでみた」みたいな動画を見たことがありまして、その時は結構興奮してたのを覚えています。そしてこのサイトを解説して、HDDの仕組み等については何度か説明してきましたが、実際にこの目でそのディスクとやらを見たことが無かったんですよね。 そこで今回は受験勉強の息抜きとして故障気味のHDDを分解して遊んでみましたのでご覧ください。
分解する準備
HDDの仕組みについては以前に紹介しました。
この記事ではハードディスクの中に磁気を帯びている金属製のディスクが入っていると軽々と説明しましたが、そのディスクこそ分厚い衣でおおわれているんですよね。 そして多くのHDDではそんな衣をはがす時、通常のプラスマイナスドライバーは使えなかったりします。 そこで今回は以下のような工具を用意しました。

HDDの分解においては少し特殊な星型ドライバーというものが必要になってくるわけですが、工作等あまりしたことがないので家にそれらしきものがありませんでした。 そのため安い星型ドライバーを探していたのですが、安いのに多くの種類の頭の部分が付属していて、かつ評価が高いというこちらの商品を見つけました。
Amazon
Rakuten
別にこの商品を紹介するのがこの記事のメインというわけではありませんが、結構気に入ったのでついでに推していきたいところです。それぞれはあまり頑丈そうには見えませんが、とにかくいろいろな種類のネジ回しが付属しています。六角のものや5頂点の星型、6頂点の星型等、この世のすべてのネジ穴を制覇できるんじゃないかと思っています。 吸盤や、隙間を広げるためのピックのようなものも付属していますので、スマホのバッテリーを交換したい時なんかも大活躍するでしょう。 ただ、今回HDD分解で必要だったのはたった一種類の6頂点星型ドライバーです。
あとはディスクを回すときにいろんなものが飛び散って目に入ってしまったら大変なので適当にそこらへんにあったブルーライトカットの百均眼鏡をかけておきました(絶対に不十分です)
これから紹介することは安全とは言えないことなので真似しないようにしてください。
実験台
今回分解していくHDDはSamsungの256GBのものです。まだ一応読み書きはできますが、データの読み書きのタイミングに関係なく定期的に異音が発生していて少しうるさかったので実験台にしてみました。
詳しいスペックについては以下をご覧ください。

これはHDDの健康状態を測るための「Crystal Disk Info」という有名なツールですが、注意判定が出てしまっています。代替処理保留中のセクタ数に不具合が出ているということで異音とはあまり関係ない気もしますが、異音関係なく寿命が近づいているのでしょう。 私も長い期間使っていましたが、なんせ中古パソコンに付属していた物ですので使用時間が4万時間近くになっていて、非常に使い古されています。 回転数は7,200RPM(一分間最大7,200回転)で、3.5インチのデスクトップ用HDDです。接続はSATA 2となっています。
HDDを分解してみる
それでは早速分解していきます。
全貌


まずは分解する前の状態をお見せします。ありがちなHDDですね。表にはSamsungの文字と一緒にスペックなどが細かい字で印刷されていて、中身は分厚い金属製の板で覆われています。裏側にはコントロール用の基板やキャッシュメモリ、電源コネクタとSATAコネクタが付いています。この辺の仕組みについては以下の記事を参照ください。
殻を割る
それではこの硬い殻を割っていきます。

星型ネジというだけでそこそこの防御力ではありますが、実は多くのHDDには隠しネジがあって、周りのネジを外すだけではうまく分解できないようになっています。分解しにくいようにというよりは、分解したことが一目で分かるようにするためですね。 つまりこの隠しネジを一度外してしまったらメーカーの保証等を受けることは基本的にできないでしょう。

フタを開けたらこのようになっていました。何度も写真で見たことがあるのでどのようなパーツ配置なのかは知っていましたが、直接この目で見るととてもきれいに感じますね。なんといっても目に付いたのはこのディスクです。下手したら普通の鏡よりもきれいに反射するレベルの鏡になっていて、最初は分解するのをやめて自分の手鏡にしようかと思ったくらいです。このディスクはプラッタと呼ばれ、アルミニウム製やガラス製、セラミック製のものがあるそうです。プラッタ自体は非磁性ですが、表面に磁性体を塗ることでデータを保存することができるみたいです。 つまりこのディスク自体は何の変哲もない円盤ですね。もしかしたらフリスビーでも代用できるかもしれません。
ただしこのディスクが一分間に数千回転という動きをし、その表面を精密な機械で読み取っていますので細かい凹凸も許されないわけです。だからここまで鏡のようなきれいさをもっているのでしょう。
ちなみにプラッタは大容量のHDDであれば複数枚搭載されていることが一般的ですが、この256GBのHDDには一枚しか搭載されていませんでした。また、裏側からのみ読み取り用のヘッドが接触していたので片面だけ使われているのでしょう。
パソコンに接続してみる
このディスクが一分間に数千回転もすることを想像したらウキウキしてしまい、思わずいつも使っているメインマシンに接続してしまいました。 フタをつけていないと動作しないというわけでもないので、いつも通り電源とSATAケーブルを取り付ければ何の問題もなくパソコン上で使うことができます。
そして実際に接続し、パソコンの電源を入れてみた様子がこちらの動画でおさめられています。
電源ボタンを入れ、パソコン全体に電力が供給されてからスピンアップまで多少タイムラグがありましたね。他にもたくさんのHDDを積んでいるので時間差でスピンアップさせるようにしているのかもしれません。
そして回り始めたかと思うと数秒であっというまにMAXスピードになりました。MAXなのかはわからないですが、その後ずっと使っていても更に加速するということはありませんでした。割と一定の回転数なのかもしれません。 一番印象に残ったのはその音でしょうか。普段は硬いからに覆われているので多少振動がするくらいで済んでいますが、ディスクがあらわになっている状態だと結構音が出ます。回転音もそうですが、起動するときにモスキート音のようなものが発生していました。
次に、ディスクの高速回転ぶりを堪能してみたかったのでディスクをとめていたネジを一度外し、その部分に付箋の切れ端を取り付けて固定して、回転させてみました。 すると案の定、回転が速すぎて何が何だかわからなくなりましたね笑
まだ一応使えるHDDなので、実際に読み書きをした時にどのような挙動をするのかについて調べてみました。書き込みをした時は意外にもほとんど目立った動きをしませんでしたが、読み込みをした時はヘッドの部分が微動している様子がみられました。
ディスクを外してみる
次にディスクを外してみました。ディスク部は軸の部分と3本の星型ネジでとめられていました。写真の通り、たくさんのネジ穴があって余っているネジ穴もありました。

また、256GBという、比較的容量の少ないHDDだからか、ディスクの枚数は1枚となっていて、アクチュエーターがディスクの背面にあり、裏側のみが使われていました。容量が多いものだとディスクがたくさん入っていたりしますね。

ディスクは非常にきれいな鏡のようになっていました。指で少し触るだけで指紋がついてしまい、傷もつきやすい感じがしますね。内部で高速回転しているのに取り出したときにとてもきれいだったので、HDDの内部環境は素晴らしいのでしょう。

ディスクを取り外した状態です。アクチュエーターが中央部を向いています。このアクチュエータ―が動くことで、ディスクの各部分にアクセスできるという仕組みですね。 そして写真右下の方には白い物体が設置されていましたが、こちらは何なのでしょうか。もしかすると湿度を保つための吸湿材のようなものかもしれませんね。
なんとなくディスクを外した状態で回してみましたが、やはりアクチュエーターが必死にディスクを探しに行く挙動がみられました。
症状と分解後
このHDDを分解しても良いと思った理由として、明らかに正常ではない異音が度々鳴っていたからということがありますね。分解してすぐはこの症状はみられなかったのですが、しばらく使っていたら症状が現れました。
特に読み書きを行っていたわけではないのですが、定期的にアクチュエーターが大きく揺れて、カチッという音が鳴り響いていました。ディスクに直接擦れていたというわけではないので、物理的な歪みのような問題ではなく、ソフトウェア的な問題があるのかとも考えられますね。
といっても問題を解決できるほどの技術力は無いのでこのHDDとはお別れをしたいと思います。
そして一通り検証を行ったら、きれいに戻しました。ディスクの裏表を間違えたとかそんな鈍くさいことはしてないと思いますが、起動時にカチッという音が鳴り響いてうまくHDDを認識させることができませんでした。本格的に壊してしまいましたね。
HDDレベルの精密機器になると、見た目ではちゃんと直せていても内部では壊れてしまっているなんてことがあるのでしょう。これからは気を付けたいと思います。 でも良い経験になりました笑
HDDの仕組みやSSDと比べた時の違い等については以下の記事を参考にしてください。