グラフィックボード。CPUに比べたら知名度の低いパソコンパーツではありますが、映像系の業界やゲーム業界においては非常に有名なパーツの一つです。消費者向けのグラフィックボード市場では現在AMDとNvidiaの二大会社がそれぞれ「Radeon」「GeForce」などのブランドを持ちつつ次々とグラボを開発していますが、CPUでおなじみのIntelはグラフィックボード市場には足を踏み入れてはいませんでした。
そんな、CPUの内臓グラフィックスのみを開発していたIntelがこの度、NvidiaやAMDと同じように外付けのグラフィックボードを発表しました。外付けのグラフィックボードとは主にデスクトップパソコンに設置されるもので、ゲーム用のイメージが強いですね。
おそらくグラフィックボードと聞いて一番耳を傾けるのはゲーマーさんかと思いますので、こちらの記事では今回登場したIntel DG1グラフィックボードがゲームに使えるのか? その辺についても触れていきます。
Intel DG1のデザイン
IntelはCPU業界において、性能が低くて安価で手に入るものから誰が使うんだってくらい高性能なものまでそろえています。そして今回Intel DG1が実質Intelのはじめての外付けグラフィックボードになるということで、どんなモンスタースペックを実現してくるのだろう? と考えていた人は少なくないと思いますが、DG1グラボの一例としては以下の通りです。

ほかのグラフィックボードと同じようにPCI-Expressスロットにとりつけるわけですが、グラボの幅としては1スロット分しかありません。だいたい通常のゲーム用グラボはあまり性能が高くないものであっても2スロット占有しているものがほとんどですが、こちらは1スロット分の厚みしかないうえに冷却ファンがついておらず、放熱するためのヒートシンクのみが基盤に取り付けられている模様です。 ちなみにこちらはGPUはIntelのDG1を採用しているものの、本体はASUSが製造している、いわゆるオリジナルファンモデルです。
勘の良い人なら分かったと思いますが、ここまで薄型設計されている時点で少なくともヘビー級のガチガチゲーミンググラボ系の位置づけではないです。
ちなみにDG1グラボはASUSのほかにもColorfulというメーカーも製造しています。

こちらは普通のゲーム用グラフィックボードって感じですね。基盤の上にヒートシンクが取り付けられていて、空気の流れを作るようにファンが二つ付いています。そして2スロット占有です。こう言っちゃなんですが、このColorfulのグラボはボディがかなりちゃちい感じになってて、正直冷却ファンについても頼りなさそうに見えますね。 ただ、ファンレスモデルもあるくらいですからこの程度で大丈夫なのでしょう。
DG1の仕様
続いてはDG1グラボの仕様について説明していきます。とりあえず以下の表をご覧ください。
Intel Iris Xe | Intel Iris Xe Max | |
---|---|---|
種別 | デスクトップ | モバイル |
アーキテクチャ | 10nm Xe | 10nm Xe |
実行ユニット | 80 | 96 |
動作周波数 | 1700 MHz~ | 1650 MHz |
VRAM | 4GB | 4GB |
TDP | 30W | 25W |
ここで取り上げたのはDG1 GPUが採用されている二種類のグラフィックボードです。「Iris Xe」はデスクトップ向けのもので、「Iris Xe Max」はモバイル向けのものになります。いずれも外付けGPUとなっていますが、実行ユニットの数は動作周波数に差異があります。 アーキテクチャは第12世代Intelグラフィックスの「Xe」であり、第11世代CPU(Tiger Lake , Rocket Lake)にも採用されているグラフィックスになりますがそれらと比べるとVRAMの量や動作周波数などでアドバンテージが稼げている模様です。
モバイルとデスクトップの比較をすると、デスクトップモデルについては実行ユニットの数が減少している代わりに動作周波数を稼ぐことができていて、TDPは30Wとなっています。30WといえばNvidia GeForce GT 1030あたりを思い出しますね。準ゲーム用グラボって感じで、どちらかというと省電力性を重視している感じがします。
実行ユニットや動作周波数などの数値についてはそのまま他社と比較することはできませんが、TDPなどから考えて、DG1の立ち位置としてはCPU内臓グラフィックス以上ゲーム用グラボ未満って感じです。
DG1グラボの用途
少なくともガチガチのゲーム向けグラボではないことはおわかりいただけたと思いますが、では一体どのような用途があるのでしょうか?
1.出力画面数を増やす
TDP 30Wで実行ユニット数96。動作周波数やメモリの量が多いだけで、ぱっと見Intelの第11世代CPUの内臓グラフィックスとさほど差はありません。そのため、CPU内臓グラフィックスだけでは担えない画面出力を担当するなどの役に立つでしょう。そうなると、だいたいモニター数4つ以上に出力したい人などにおすすめなのかもしれません。
2.高解像度出力
3Dゲームなどはかなり高いグラフィック性能を必要としてきますが、通常の動画再生程度であればそこまでの性能は必要とされません。しかしながら4K出力やそれ以上の出力ともなると、CPU内臓グラフィックスでは不十分なことが多々あります。そういったときに、このDG1がかゆいところに手が届くのではないかと思います。 最大どれくらいの解像度に出力することができるのかはわかりませんが。
3.AI処理
Intelが公式ホームページで発表していることですが、このDG1 GPUは自身のAI処理テクノロジーを駆使して省電力でコンテンツの作成などができるようになるとのことです。我々消費者には正直よくわかりませんが、ここまで堂々と掲げていますのでおそらくNvidiaやAMDのGPUなどとはまた違うのでしょう。
4.諸エンコード
DG1には4つのエンコードエンジンが搭載されていて、それらをフル活用することによって動画エンコードなどがよりスムーズに、省電力に行うことができるとのことです。
まとめ
最後にまとめになりますが、以上の通りDG1はあまりゲーム向けGPUとは言えない仕様になっています。IntelはフルHD,60fpsのゲームプレイを快適に!みたいな宣伝をしているようですが、正直なところゲーム目的なのであれば王道のNvidiaやAMDのGPUを使用するほうが良いでしょう。 どちらかというとこのDG1はゲーマーというよりはクリエイター向けのグラフィックボードといった感じですね。そのため、なんか強そうだからという理由で購入するのはやめましょう
ちなみにDG1はAMDのCPUなどを使っている環境ではうまく動作しないとのことですので、相性問題には注意が必要そうです。また、Intelのプロセッサーと組み合わせることで何かと本領発揮したりするのでIntelの環境を整える必要がありますね。
参考記事:https://wccftech.com/intel-launches-dg1-graphics-card-based-on-10nm-superfin-for-oems-a-triumph-for-xe/