AMDは2019年の7月に、第三世代Ryzen CPUを発売しました。Ryzenシリーズは非常に性能が良く、最低モデルのRyzen3でさえそこそこ良いパフォーマンスを発揮します。ですが惜しいのはその値段です。
でもこの度、AMDからRyzenと同じソケット(AM4)に取り付けることができる新しいAthlon CPU「Athlon 3000G」がたったの5,000円で発売されたので詳しく解説していきます。
この記事を2行で説明すると
- AMDから、5,000円ポッキリの廉価版CPU「Athlon-3000G」が発売された
- Intelの廉価版CPUなどと比べるとコストパフォーマンスに優れていて、内臓グラフィックスの性能も比較的高いため、おすすめのCPUである
Athlon 3000Gの仕様を紹介
まずは本日発売されたAthlon 3000Gの仕様を紹介していきます。比較用に、2.5万円程度で販売されている第三世代Ryzenシリーズの「Ryzen5 3600」の仕様も載せます。
比較項目 | Athlon-3000G | Ryzen5-3600 |
---|---|---|
アーキテクチャ | Zen | Zen2 |
プロセス | 14nm | 7nm |
コア数/スレッド数 | 2/4 | 6/12 |
基本クロック | 3.5GHz | 3.6GHz |
L3キャッシュ | 4MB | 32MB |
PCI-e リビジョン | 3.0 | 4.0 |
TDP | 35W | 65W |
最大メモリクロック | 2,667MHz | 3,200MHz |
内臓グラフィックス | Radeon Vega 3 | なし |
市場価格目安 | 5,500円程度 | 25,000円程度 |
それでは一つひとつ解説していきます
1、アーキテクチャ/プロセス
これが意外と勘違いされがちなのですが、Athlon-3000Gは型番こそ3000番台ではあるものの、第三世代Ryzen CPUとはアーキテクチャが異なっています。
Athlon-3000Gでは実に二世代前、つまりは新世代のRyzen CPUに搭載されていた「Zen」アーキテクチャが採用されています。そのため製造プロセスとしても最新の7nmではなく、14nmとなっています。なのでRyzen5-3600より2倍回路が太いということになりますね。
2、コア数/スレッド数
コア数スレッド数については廉価版CPUではよくみられる「2コア/4スレッド」という構成になっています。
ゲームプレイや動画編集などの重い作業をする上では不足感はありますが、動画再生やWebページの閲覧をする上では十分です。
5,000円の廉価版CPUでもマルチスレッディングテクノロジー(1コアにつき2スレッド以上)を導入しているのが優秀な点ですね。
3、クロック数/L3キャッシュサイズ
クロック数についてはRyzen5とあまり変わりません。ですがこれはベースクロックの話です。Ryzen5などのCPUではクロック数を自動で引き上げる機能が搭載されていて、Ryzen5-3600では最大4.2GHzまでブーストします。
ですが廉価版のAthlon-3000Gでは周波数がブーストされません。
これはIntelの廉価版CPUでも同じことがいえますね。ただしAthlon-3000Gは廉価版CPUでありながらオーバークロックをすることができます。これについては後ほど解説します。
そして主にゲーム性能等に影響してくるL3キャッシュサイズについてはたったの4MBです。ただ、キャッシュサイズが少なくても体感できるほど性能が低くなったりはしません。そもそもAthlon CPUは重い処理を行うことを想定されていないので、キャッシュサイズを大きくする必要がないのです。
4、PCI-eリビジョン
サポートするPCI-eのバージョンは3.0となります。まだPCI-e 4.0はあまり普及していないですし、大手GPUメーカーのNvidiaがPCI-e 4.0対応グラフィックボードを生産していないくらいですから、リビジョンについては3.0で十分です。
Zen2アーキテクチャを採用しているならばPCI-e 4.0をサポートしたかもしれませんが、そもそもZenアーキテクチャがベースとなっているのでPCI-e 3.0までのサポートになります。
5、TDP
おおよその消費電力や、発熱量の程度を表すTDPについては、35Wと、かなり控えめになっています。2コア4スレッドということもあり、消費電力についてはだいぶ削減することができているようです。
また、低発熱でもありますから、小型ケース等に入れてコンパクトなパソコンを作っても熱問題は発生しないでしょう。
加えて、オーバークロックをしても発熱しすぎないという特徴もあります。そのため、低価格でオーバークロックを楽しむことができるCPUという見方もあるでしょう。
6、最大メモリクロック
少し注意が必要なのが、対応するメインメモリが第三世代Ryzen CPUとは異なることです。最大で2,667MHzまでの対応ですので、3,200MHzのメインメモリを使用することはできません。
7、内臓グラフィックス
Athlon-3000Gの特徴は内臓グラフィックスが搭載されていることです。型番についている「G」はそれを表しています。
内臓グラフィックスとしてRadeon Vega 3グラフィックスを搭載しています。Vegaアーキテクチャはあのハイエンドグラフィックボード「Radeon RX Vega-64」でも採用されたものです。そのため、非常に優秀な性能を誇ります。
ただ、非常に優秀とはいえアーキテクチャ自体はかなり前のものになるのでそろそろ内臓グラフィックスで、最新の「Navi」アーキテクチャ等が採用されても良い頃合いなんですけどね…
内臓グラフィックスの性能については後ほど紹介します。
8、価格
市場価格の目安としては5,500円程度です。アメリカ等では49ドルで販売されています。最新のCPUとしてはかなり安いですね。性能はともかく、この価格でRyzenと同じ環境で使えるというのは非常に助かるでしょう。
ここまで安ければ将来的にAM4ソケット対応のRyzen CPUにアップグレードしようとしている人が最初に購入するのもありだと思います。
Athlon-3000Gの性能は?
続いては性能についてです。
CPU性能
AMDが独自に、ライバルCPUの「Intel Pentium Gold G5400」と比較した結果としては以下の通りです。こちらの製品はおよそ10ドル高い、60ドルとなっています。

あらゆる測定においてAthlon-3000Gが優秀な結果をおさめているのが伺えるでしょう。しかしながら、これはAMDが公開したものになります。
疑っているわけではないでっすが、より中立的な立場から評価するため、Geekbenchを調べてみることにしました。するとAthlon-3000Gのベンチ結果が1サンプルだけ見つかりましたので、Ryzen5-3600、それからIntelのPentium Gold G5400と比較してみましょう。
以上の通りです。
Pentium-G5400の性能をわずかに上回っていることがわかります。
その上、Athlonの方が価格が安いので、かなりコストパフォーマンスが高いといえますね。
内臓グラフィックス性能
続いては、Athlon-3000GとPentium-G5400に搭載されている内臓グラフィックスの性能を比較してみましょう。
AthlonにはRadeon Vega 3、PentiumにはUHD Graphics 610がそれぞれ搭載されています。
グラフは、Passmarkの値を参考にしたものになります。
内臓グラフィックスについてもAthlonの方が若干優秀といった感じです。
ただし、正直この値ならどんぐりの背比べ状態です。フルHDの動画再生等はどちらも問題なく行えると思いますが、最新のゲームをプレイしようとしたら、どちらも内臓グラフィックス性能でもかなりの不足感があると思います。
最新の3Dゲームを快適にプレイしたい場合、この値は1万程度ほしいものです。
やはり廉価版のCPUということで内臓グラフィックス性能もかなりおさえられているのでしょう。
そのため、ゲーム用途には使わない方が良さそうです。
買い?
先ほども説明しましたが、このAthlon CPUはRyzenと同じく、「AM4」ソケットに対応しています。
マザーボードについても、一部例外はあるもののこれまでのRyzen CPUが動作するものならほとんど使うことができます。
そういうわけで、将来的にRyzen CPUにアップグレードする予定だけど、今はまだ試験的に低性能なCPUを搭載したいという人にはかなりオススメです。
また、性能はあまり高くないもののオフィスソフトを動かしたり、動画再生を行ったり、Webページの閲覧を行う分には十分な性能です。
とにかく安いCPUで自作パソコンを組みたいという人にはかなりおすすめです。
参考記事:https://www.pcmag.com/news/372057/amd-ships-unlocked-49-athlon-3000g-processor
購入はこちらから
※AMDの発表価格としては49ドルだったはずなのですが、日本では今のところ7,000円を超えているみたいです…