AMDから第三世代Ryzen CPUのメインストリームプロセッサが発売されたのは今年の7月のことです。しかし、ハイエンドデスクトップ向け(HEDT)の第三世代Ryzen CPUはまだその姿を表していませんでした。
そしてこの度、AMDから第三世代 Ryzen HEDT , Threadripperが発表されたので、この記事では徹底的に解説していきます。
この記事を2行でまとめると
- AMDが第三世代Ryzen Threadripper「3960X」「3970X」を発表
- 最大コア数は変わらず、32コアで、性能はIntelの「Corei9-9980XE」の1.5倍程度となっている
第三世代Ryzen threadripperの仕様
まずは第三世代 Ryzen Threadripperの仕様を解説していきます。
今回AMDから発表されたのは「threadripper 3960X」と「threadripper 3970X」の二つになります。
前世代threadripperとの比較
それでは最初に、前世代のRyzen threadripper 2990WX , 2970WXと比較していきましょう。
型番 | コア/スレッド | クロック数 | L3キャッシュ | PCI-e | RAM | TDP | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
TR 3970X | 32/64 | 3.7 / 4.5 | 128MB | 88 Gen 4(72使用可能) | DDR4-3200 | 280W | 1,999ドル |
TR 2990WX | 32/64 | 3.0 / 4.2 | 64MB | 64(4からPCH)Gen 3 | DDR4-2933 | 250W | 1,799ドル |
TR 3960X | 24/48 | 3.8 / 4.5 | 128MB | 88 Gen 4(72使用可能) | DDR4-3200 | 280W | 1,399ドル |
TR 2970WX | 24/48 | 3.0 / 4.2 | 64MB | 64(4からPCH)Gen 3 | DDR4-2933 | 250W | 1,299ドル |
・ネーミング
まず型番についてですが、最上位モデルで「W」がつかなくなりました。
ちなみにWがついているモデルはクリエイター向けとなり、ゲームというよりはもっとマルチ処理性能が必要な処理を行うのに最適です。
Xモデルは主にゲーマー向けです。
また、十の位の数も全体的に変更されています。ただし実際はTR 3970Xの前身は24コア48スレッドの「TR 2970WX」とのことで、TR 2990WXの後継として今後TR 3990WXが出ると予想されています。
というか、実際に本日その情報が漏れてしまったようです。
ちなみに「3960X」という型番は、Ryzen9-3950Xにかなり近いです。これまではメインストリームプロセッサとは型番がかなり離れていた印象ですが、今世代から隣接しました。
・コア数 クロック数 キャッシュサイズ
コア数については前世代と変更はありません。以前私はこのブログに以下のような記事を投稿しました。
この記事では、次の世代ではコア数が増して64コアになるでしょうと予想しましたが、どうやら外れたようです。32コアのままとなりました。
更に言えば、次の世代(第四世代)のthreadripperは1コアあたり最大4スレッドまでサポートする「SMT4テクノロジー」が実装される可能性が高いので、おそらくコア数は32コアよりも増えることはないかと思われます。
そしてクロック数についてはほとんど変わっていないようです。そもそもCPUのプロセスが12nmから7nmに縮小されているので、クロック数をあげるのは非常に難しいですし、むしろ同じクロック数を保てているのもすごいです。
そのため、非常に高いパフォーマンスが期待されます。
そしてキャッシュについては前世代の2倍となりました。
・PCIe RAM
PCIeについてはZen2アーキテクチャの特徴とも言える「PCIe 4.0」をサポートしていますので、最新のグラフィックボードやM.2 SSD等をフル活用させることができます。
そしてメインメモリのサポート周波数も上昇しました。そろそろDDR5の登場が見えてきましたね。
・TDP
TDPは前世代から30W上昇しました。7nmプロセスになったことでより少ない消費電力になることが予想されましたが、むしろ多くなったようです。7nmとなりエネルギー効率が高い中、280WのTDPということなので相当パフォーマンスが高いでしょう。
・価格
価格については前世代から数万円程度上昇しました。Intelの最新HEDT「Corei9-10980XE」等と比べると決して安くはないですが、パフォーマンスについてはCorei9-10980XEをかなり上回っていると期待できます。
・ソケット 対応チップセット
表には記載していませんが、実は対応するソケットとチップセットが変わりました。
ソケットについてはいままでTR4だったのに対し、sTRX4になりました。
また、チップセットについてはいままでX399に対応していましたが、TRX40となりました。
メインストリーム向けのチップセットとはかけ離れたネーミングになっています。これらが変更されたのは第二世代から第三世代にかけて大幅なプラットフォーム刷新が入ったためです。
第三世代Threadripperの性能
一通り仕様を見たところで気になるのは性能です。
IntelのHEDT「Corei9-10980XE」等よりも若干高い価格となってしまいそうですが、そのパフォーマンスはどれくらいのものなのでしょうか。

これはAMDが公式で発表した第三世代threadripperのパフォーマンスです。
比較されているのはIntelの前世代HEDT「Corei9-9980XE」です。10980XEはまだ発売されていないので、実質的には最新のものになります。
Corei9-9980XEとTR 3970Xを比べてみると、一部の結果ではおよそ2倍の性能差が現れています。
そして、全体で平均して50%程度、つまりは1.5倍性能が高いということになります。
ただ、意外と気になるのは3960Xと3970Xの性能差です。
二つには6万円以上の価格差がありますが、一部のベンチ結果ではあまりスコアに差がないように見えます。
また、おそらくこの二つの差が一番大きい、一番右のベンチ結果は、コア数が関係してくるマルチ処理系のベンチマークでしょう。
マルチ処理性能はゲーム性能にそこまで関わってこないので、単にゲーム性能だけでいえば3960Xと3970Xはほぼ変わらないと思われます。
このCPUを購入する人がどのような用途で購入するのかはわかりませんが、おそらく3970Xはコストパフォーマンスが悪いです。
関連記事:Ryzen5 4500Uは発売される?