AMDといえばパソコン向けのプロセッサ「Ryzen」やグラフィック処理装置の「Radeon」シリーズを製造していることで有名ですが、パソコン以外のスマートフォン系に関して特に関わっている様子はありません。
スマートフォンの処理装置といえばAndroidスマホではQualcomm社のSnapdragonシリーズが主流となっています。ですがこの度、スマホの処理装置市場にAMDが参入するかもしれないと噂され始めたので、少し深堀して紹介していきます。
この記事を1文で説明すると
- AMDは1年以内に、同社のRadeon GPUを統合したスマートフォン向けハイエンド処理装置を発売するかもしれない
AMD Ryzen C7 SoCの実態
今回このような事柄が噂されるようになったきっかけとして、AMDが製造するスマートフォン向けの処理装置(SoC)の情報が発見されたということがあります。発見されたと言ってもAMDが公式に発表しているものではありませんし、資料自体が正確なものなのかも怪しい所ではあります。ただしそこではかなり詳しくSoCの仕様が説明されています。
ということでこのRyzen C7 SoCの仕様について紹介していきます。

なお、これから紹介する仕様は上の画像に基づいています。
CPU構成
SoCとは、CPUやGPUなどの処理装置が統合されて一つになった「チップセット」の事です。
[dic term=”SoC”]
そしてその中に中央処理装置である「CPU」が含まれています。スマートフォンの性能というのは主にこの「CPU」で左右されます。そしてスマートフォン用のCPUではすべてのコアが同じ種類というわけではなく、省電力のコアと高性能なコアを組み合わせられているのが主流です。これをbig.LITTLEと言ったりします。
[dic term=”big_LITTLE”]
そして噂情報ではこのRyzen C7 SoCのCPU構成は以下の通りになっています。
CPU | 動作周波数 | |
---|---|---|
省電力コア | ARM Cortex-A55 | 2 GHz |
高性能コア | ARM Cortex-A78 | 2.6 GHz |
スーパーコア | ARM Cortex-X1 | 3.0 GHz |
どれもARMアーキテクチャのものとなっていて、CPU構成だけで見ると既存SoCのSnapdragonシリーズとさほど変わらないようにも見えます。Cortex-A55は割と前からある省電力コアですが、A78とX1については割と最近発表されたもので、最新の5nmプロセスが想定されているものになります。
三種類のコアとなっているわけですが、実は似たような、という同じ上と同じコア構成になると言われているSoCが他にもあります。それはSnapdragon 875です。次世代のハイエンドSoCになりますが、875に関しても上のようなCPU構成が噂されています。 また、同様にTSMCの5nmプロセス半導体となります。
GPU
中央処理装置であるCPUは重要ですが、映像を出力するためには「GPU」が必要になってきます。
[dic term=”GPU”]
既存のSnapdragonシリーズ等には「Adreno」というシリーズのGPUが搭載されています。ここでこのAMD Ryzen C7 SoCもAdrenoを採用してしまったら完全にSnapdragon 875と同じ仕様になるということになってしまいますが、ここで違いが生まれるそうです。
Ryzen C7に搭載されるのはAMDのRadeon GPUになると言われています。冒頭でも説明した通り、RadeonシリーズはAMDが手掛けているGPUシリーズになります。主にパソコン用のGPUとなっていて、AppleのMacパソコンには多く採用されています。 ですが、スマートフォンほどの小型端末に採用されている例は恐らくないでしょう。アーキテクチャは最新の第二世代RDNA(Navi 20?)になると言われていますが、スマートフォン向けにするには再設計が必要になると思います。
ただ、もしもRadeon GPUを装備することができたら最新のSnapdragon SoCに搭載されているAdreno 650 GPUよりも45%程度速くなると期待されています。
正直Adreno 650に性能不足感を抱いている人はほとんどいないと思うのでスマートフォンのGPU性能がそこまで高くなったところで今すぐに活躍できるかはわかりませんが、AMDなりの強みを出すことはできます。また、スマートフォン内の画面出力というよりは、外部モニター出力時にその性能を発揮できるのではないかとも言われています。
また、RDNA 2の目玉機能「リアルタイムレイトレーシング」についてもサポートすると言われています。
[dic term=”レイトレーシング”]
通信
CPUがハイエンド仕様というだけあって通信関係もしっかりしているようです。最新のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)をサポートしているほか、60GHz帯の通信を可能にする高速Wi-Fi(IEEE 802.11ay)をもサポートするだろうと言われています。
そしてBluetoothは5.1、USBは3.1通信をサポートします。GPU以外の仕様は普通のハイエンドSoCといった感じになりそうです。
AMDの意向とは
AMDがRyzen SoCを製造するかもしれないというのはあくまでも噂情報にすぎませんが、もしそうなるとしたら非常に興味深い話です。AMDはGPUやCPUなどの他に新たな収入源を見つけることができる上に、今着実に発達している「モバイルハードウェア」事業に積極的にかかわることができるようになるかもしれません。
また、CPUやGPUなど一部の機能しか持たない装置を製造していたAMDにとって、複数の要素が統合されている「SoC」を製造するというのは難しい話になるかもしれませんが、このようにして発達していけばそのうち独自のスマートフォンを製造するようになるかもしれませんね。
そしてこのSoCがこの仕様で実際に登場するとするなら、おそらく一年以内には登場するものと思われます。そしてSamsungなどと提携して新たなGalaxyシリーズスマートフォンに導入されるのではないかとも言われています。
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