カーボンナノチューブを使ったCPUの実態とは?

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従来のCPUというのはシリコン(ケイ素)を用いられて作られます。パフォーマンス向上のためにプロセスの微細化・トランジスタ密度の向上を図ってきましたがどうやら時代は「新たな素材によるプロセッサ」に移行していくようです。この記事ではカーボンナノチューブ(炭素)を使ったマイクロプロセッサについて紹介していきます。

プロセスの微細化から素材変更へ路線変更

まずは、マイクロプロセッサについてプロセスの微細化を目指されてきた時代から素材を変更する時代へと移行しつつある経緯を説明します。

1、トランジスタ密度が高いほどパフォーマンスは良くなる

ここではマイクロプロセッサを「CPU」と捉えても大丈夫です。IntelやAMDのCPUというのはここ十数年においてプロセスの微細化を試み、トランジスタ密度が向上するのを目指していました。

回路全体が縮小することでより多くのトランジスタを搭載することができ、より複雑な処理を行えるようになります。 単純に、トランジスタ密度が二倍になることで二倍近いパフォーマンスを期待できるのです。

今日、Intelでは10nmプロセスのプロセッサが、AMDでは7nmプロセスのプロセッサ(Zen2アーキテクチャ) がそれぞれ最小プロセスとなっていますが、専門家によるとこれ以上プロセスの微細化を行うのは効率が悪いとのこと。

これについてはこちらの記事をご覧ください。

http://news.mit.edu/2019/carbon-nanotubes-microprocessor-0828

But experts now foresee a time when silicon transistors will stop shrinking, and become increasingly inefficient.

(専門家によると、トランジスタの縮小が止まり、そもそもトランジスタを縮小することが非効率になっていくそうです)

この文章は上のリンクの記事で説明されていた一文です。

つまり、トランジスタを縮小することでパフォーマンスの向上は期待できるけど、あまりに難しすぎてパフォーマンス向上としては非効率になってきているということになります。

そこで、プロセスの微細化の他に注目するべきところを専門家が見出したところ「素材」という考えが出てきたそうです。

2、注目された「カーボンナノチューブ」

そして注目されているのは「カーボンナノチューブ」。この物質の存在自体は結構昔から知られているとは思いますが、この物質を用いてマイクロプロセッサを作ることができそうになったのはここ最近の話だそうです。

・そもそもカーボンナノチューブとは?

カーボンナノチューブと言われてもピンと来ない人もたくさんいると思います。なので簡単に引用説明しておくと、

(カーボンナノチューブのイメージ図)

炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質。

六員環ネットワークってなに… グラフェンってなに…(怒)

安心してください。私自身も人に説明できるほど詳しくはないです(それはそれで問題ですが…笑)

要は、炭素原子が上の図のようにチューブ状に結合した分子ということです。

上の画像で見えている一つ一つの丸い粒は原子ですから、その小ささは想像できると思います。

炭素原子の直径はおよそ0.1nmですので、この物質で回路が作れるとしたらそれはだいぶ密度が高くなりそうですよね。

そして、カーボンナノチューブの特性を軽く説明しておくと、

  • 小さい
  • エネルギー効率が良い

というのがあります。

よりコンパクトな回路設計にできるってのもありますが、エネルギー効率が良いというのがだいぶ大きいポイントです。

従来使われているシリコンに比べると10倍以上もエネルギー効率が良いとのことで、より低消費電力に、かつ低発熱で運用することができるようになるでしょう。

3、MITの研究者が発明した技術

そしてこの技術を取り入れたマイクロプロセッサを実証したのがMITの研究者です。

マサチューセッツ工科大学の略ですね。

このプロセッサは「Hello World!」を出力する等の簡単なプログラムを見事にこなすことができました。ですが様々な問題があるようです。

・純度問題

ここからはかなり難しい話なので簡単に説明します。

このような回路では「0,1」それぞれに対応する状態が必要となるために「半導体特性」が必要になってきます。

シリコンはともかく、カーボンナノチューブでは生成時にごく一部が金属になってしまい、処理を遅くさせたり不具合を引き起こしてしまったりします。

これを防ぐためにより純度の高いものを生成する必要があるのですが、その目安が「99.999999%」純度となっていて、今の技術では不可能だそうです。

ですがこの問題についてはもう解決していて、「純度をより高くする」のではなく「不純な部分が処理を妨げないようにする」という方向で改善が進みました。

つまり、不純である金属を特定の配置にすることによってある程度許容できるようにしたのです。これにより99.99%程度の純度でも大丈夫になり、現在でも生成可能になりました。

・汚物除去問題

マイクロプロセッサ作成時には、生成したカーボンナノチューブをウェーハ上に付着させることから始まります。

ウェーハは、半導体材料を薄く円盤状に加工してできた板のことで、チップのベースとなるものです。

この工程で一部のカーボンナノチューブが互いにくっつきあって大きな束を生成してしまいます。これが「汚物」と呼ばれ、除去しなければきれいに回路を組むことができません。

この問題についても解決されていて、特殊な溶剤にカーボンナノチューブを浸すことで大きな束だけ除去することができるようになったそうです。

・普及するのか問題

ここまで苦労して開発したこのマイクロプロセッサの原型は、生成に繊細な技術と高いコストがかかるため、今の所あまり実用性がありません。

もはや時間の問題ですが、これらの技術が世の中に出回れ、実用されるのはまだ数年先のことになると予想されています。

どのように普及していくのか

普及するまでに時間がかかりそう、と述べた直後にこの話をしていくのもなんだかおかしな気がしますが、どのように実用されていくのかは気になるところです。

専門家によると、5年程度で世の中に出回って、その技術でマイクロプロセッサが生産することになるとのことです。

ここ数年はずっと10nmプロセスのアーキテクチャを開発しているIntel社ですが、もしかするとプロセスの微細化以外にこのような技術を取り入れようと考えているかもしれません。

よりコンパクトでより高性能なコンピュータを必要としてきているこの時代において、これらの技術を取り入れることは妥当だと考えられます。

今後数年間でマイクロプロセッサのアーキテクチャはどう変化していくのか、とても楽しみです。

合わせてこちらの記事もご覧ください

Intelは第10世代IceLakeCPUのデスクトップ向けをあきらめている説


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