当サイトではIntelやAMD製のCPUの情報を多く紹介してきました。しかしそれ以外のメーカーが製造するCPUについて説明するのは今回は初めてかもしれません。
2019年7月にAMDが一般的なデスクトップ向けCPUとしては初めて7nmプロセスを採用した「第三世代 Ryzen CPU」を発表し、来年にZen3アーキテクチャのCPUを、そして再来年にはDDR5をサポートするZen4アーキテクチャのCPUを製造する予定です。そんな中、IntelでもAMDでもない中国の半導体メーカーがDDR5をいち早くサポートするCPUを開発していることが明らかになりましたので、この記事紹介していきたいと思います。
目次
この記事を1文で説明すると
- 2013年に誕生した中国のCPUメーカー「Zhaoxin」が2020年後期に製造を開始する予定の「KX-7000」シリーズCPUはIntelやAMDよりも早くDDR5メモリをサポートするかもしれない
IntelでもAMDでもない中国のCPUメーカー「Zhaoxin」
CPUといったらIntelやAMDのものを想像する人が多いでしょう。しかし数年後には「Zhaoxin(兆芯)」という半導体メーカーも多くの人が知ることになるかもしれません。ここは日本ですが、兆芯という名前は中国国内特有のものであり、グローバルな名前ではないのでこの記事ではZhaoxinと呼びます。
いつ設立された?
AMDやIntelは60年代からの古い歴史を刻んでいますがZhaoxinはなんと2013年に設立されたx86互換CPUの製造企業になります。
2013年といったらIntelのCoreシリーズCPUが世の中に多く広まってきた時期です。CPU市場は完全にIntel、あるいはAMDのものになっていたという状況の中で中国でZhaoxinが誕生しました。
AMDやIntelとどれくらい差がある?
我々にとってZhaoxinもIntelもAMDも、半導体の技術においては雲の上の存在でしょう。しかしIntelやAMDにとってZhaoxinは子供、いや孫のような存在です。そうしたら当然ながらIntelやAMDの技術に追いついていないと想像できますが、実際のところはどうなのでしょうか?
Zhaoxinが実際に製造している半導体(CPU)の一例から、どれくらいの技術を保有しているのかを把握します。
シリーズ名 | コードネーム | 生産開始年 | プロセス | コア数/スレッド数 | 動作周波数 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|
ZX-D / KX-5000 / KH-20k | Wudaokou(五道口) | 2017 | 28nm | 4/8 | 2.0GHz | dual channel DDR4 PCI Express 3.0 USB 3.1 (Gen 1 and 2) USB 2.0 SATA 3 (SoC) |
ZX-E / KX-6000 / KH-30k | Lujiazui(陸家嘴) | 2019 | 16nm | 8/8 | 最大周波数3GHz | DDR4 PCIe 3.0 SoC |
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%86%E8%8A%AF
この表は2019年までに製造されたCPUの情報を表しています。Zhaoxinは主に「KX」という名前のCPUシリーズを製造していて、IntelやAMDなどと同様に、一般的なデスクトップパソコンをターゲットにしています。
KX-5000シリーズが発売された2017年に、Intelはもう第八世代CoreシリーズCPU(Corei7-8700K等)を製造し、14nmプロセスCPUの本格的な生産に行きついていました。また、14nmプロセスを採用したRyzen 第一世代シリーズがAMDから発売されたのもこの年でしょう。
そんな中Zhaoxinはまだ28nmプロセスを採用していて、明らかに時代遅れとなっていました。ですが二年後になる2019年には、16nmプロセスCPUを製造しはじめ、徐々にIntelの14nmプロセスに接近してきていました。しかしAMDは第三世代Ryzen CPUを発表し、7nmプロセスCPUの生産を本格的に始めたため、その点ではZhaoxinもまだまだ遅れていました。
いち早くDDR5をサポートするかもしれない「KX-7000」シリーズCPU
上の表ではIntelやAMDの技術から一歩遅れてCPUを製造しているのが伺えましたが、そんな中で、もしかしたら2020年内にZhaoxinがIntelやAMDを超えるかもしれないと言われています。そのカギになるのは「DDR5メモリ」のサポートです。
とりあえず、Zhaoxinが2020年後半、あるいは2021年前半に生産を開始するであろう「KX-7000」シリーズCPUの情報をまとめてみます。
シリーズ名 | コードネーム | 生産開始年 | プロセス | コア数/スレッド数 | 動作周波数 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|
ZX-F / KX-7000 / KH-40k | ??? | 2020後期? | 7nm(TSMC?) | 8/16? | より高い | DDR5メモリ PCIe 4.0 DX12に対応した内蔵グラフィックス |
このようになっています。まだ噂だらけの情報ではありますが、公式でもしっかりと述べられている部分もあります(下図参照)

このロードマップではKX-6000シリーズが「Future」となっていますが、もう2019年に製造が開始されました。このまま順調にいくと2020年の後期にKX-7000はその姿をIntelやAMDのCPUと共にCPU市場に顔を出してくるのではないかと期待されます。
PCI-e 4.0
何気に、PCI-e. 4.0にも対応する予定です。PCI-e 4.0についてあまり言及してこなかったのは、もうすでにAMDが第三世代Ryzen CPUにてサポートを開始しているためですね。
こちらの記事にPCI-e 4.0についての情報がのっていますが、まだこの規格をフル活用できるデバイスがあまり存在しないくらい新しい技術になっています。
DDR5
そしてKX-7000シリーズCPUではDDR5メモリもサポートする予定です。
AMDは2021年にZen4アーキテクチャを採用した「第五世代 Ryzen CPU」にてそのサポートを開始する予定ですので、ZhaoxinがKX-7000シリーズを2020年内に生産すれば、最も早くDDR5をサポートしたことになります。
関連記事:第4世代RyzenではPCI-e 5.0 & DDR5メモリ対応?
Intelについては、まだPCI-e 4.0のサポートも開始していませんので、DDR5についてはまだまだ先のことになりそうです。
より高性能な内蔵グラフィックス
KX-7000シリーズの進化ポイントとしては、内蔵グラフィックスの強化もあります。
これについてはまだあまり言及されていませんが、DirectX_12をサポートしたうえで、より高性能な内蔵グラフィックスを搭載し、より使い勝手の良いSoC(System On Chip)になると期待されます。
7nmプロセスルール
そしてもうもう一つの大きな進化ポイントが、7nmプロセスルールを採用するということです。
どうやらTSMC製の7nmプロセス半導体を用いるとのことですので、実質的にはAMDと似たようなアーキテクチャになるのではないかと思われます。ただその一方で、AMDのZen3アーキテクチャでは、より進化した7nm+プロセスが採用されるため、プロセスについてはまだAMDに追いつくことはできないでしょう。
性能はどれくらいになるか
プロセスやサポートメモリの規格、PCI-eのバージョン等の半導体技術について評価するのは大事なことですが、結局エンドユーザーのことを考えるうえで大事になってくるのはCPUのパフォーマンスです。
ZhaoxinのKXシリーズCPUについては、これまでいろんなCPUを競合としてきましたが、総合的に一番比較されることが多いのはIntelの「Corei5」辺りのCPUです。
Corei5というと、低価格・低性能のCPUではないけれどもゲーミング用の高性能CPUというわけでもないといった感じの、バランスのとれたCPUというイメージがあるでしょう。
実際に世の中で最も多く使われているのはCorei5シリーズのCPUだったりするので、Zhaoxinもそれくらいの性能を保有したCPUに力を入れているのでしょう。
そして、Intelは2020年にはまだデスクトップ向けCPUで14nmプロセスを使う(第10世代Coreシリーズ)ため、先に7nmプロセスを導入するとなると、ZhaoxinのKX-7000シリーズの方がCorei5よりもコストや省電力性等における優位を得ることができそうです。
どういった形で我々の手元にやってくるのかはわかりませんが、もしいち早くDDR5をサポートするのならば、KXシリーズCPUはIntelやAMDの独占市場に一歩踏み出すことになるでしょう。
これからが楽しみですね。(少し上から…?)
参考記事:https://www.tweaktown.com/news/69334/china-1-cpus-zhaoxin-plans-pcie-4-ddr5-2021/index.html
https://wccftech.com/a-chinese-competitor-to-intel-and-amd-cpus-zhaoxin-might-be-the-answer/