世界でPCI-express 4.0をサポートする製品が登場し始めたのは2019年、AMDがそれをサポートする「第三世代 Ryzen CPU」を発売し始めたころの事でしょう。
2021年に発売されるRyzen CPUではPCI-e 5.0をサポートすると予想されますが、その一方でIntel製のCPUはまだPCI-e 4.0すらサポートしていません。
しかしそんな中、もうPCI-e 6.0の情報が発表されました。
この記事ではPCI-e 6.0の仕様や使いどころについて解説していきます。
この記事を2文で説明すると
- PCI-express 6.0は5.0の二倍の帯域幅を実現し、1レーンで2.0の16レーン分の通信速度を実現することができる
- より少ないレーンでデバイスと接続することができることが期待されている
PCI-express 6.0とは?
そもそもPCI-expressとは、PCI-SIGという非営利団体によって作られている規格になります。
PCI-SIGが最初に新しいPCI-eのバージョンを策定し、そこから数年後に実用化されるというのがこれまでの流れなのですが、先日PCI-SIGはもうPCI-e 6.0についての情報を発表しました。 ただ、まだ完全な発表ではなく、発表されたのは「バージョン0.5」になります。
そしてその仕様はというと、非常に単純です。PCI-eのこれまでの進化を追ってくればわかることなのですが、PCI-e 6.0ではPCI-e 5.0の二倍の帯域幅を実現します。

このグラフを見ればわかりますが、PCI-eの帯域幅は数年ごとに倍になっていて、2010年の規格でさえ遠い過去のように感じてしまいます。
この通信速度が実現されるとしたら、PCI-e 6.0は1レーン当たり約8GBpsの通信速度を保有することになります。そして一般的なグラフィックボード接続用の16レーンスロットについて考えると、およそ128GBpsということになります。
つまりは1レーンだけでPCI-e 2.0の16レーン分の通信速度を実現することができます。
一般的に現在のグラフィックボードはPCI-e 3.0、むしろPCI-e 2.0 x16接続でも十分に性能を発揮することができますので、PCI-e 6.0となればx1接続でも全く問題ないでしょう。
また、これらの仕様は従来のNRZ 128b / 130bからPAM-4 128b / 130bにエンコード方式が変更されることで実現することができています。PAM-4は簡単に説明すると、従来情報を二種類の波形で表現していたところを、更に細かく分けて二倍の四種類の波形で転送できるようにし、結果として同じ転送速度でも二倍の情報量を実現することができるというような感じです。
なお、従来よりも波形がシビアであり、ノイズなどが入ってしまうとうまく読み取れなくなる可能性についても考えられています。
PCI-e 6.0、使い道は?
ここまで通信速度が速くなってくるともはやグラフィックボードの技術が追い付けず、オーバースペックになるでしょう。PCI-e 4.0はx4接続のM.2 SSDがそれを有効活用することができていますが、グラフィックボードについてはすでにPCI-e 3.0 x16で十分となっています。
そこで期待されるのは「少ないレーンでの運用」です。実際にPCI-e 4.0をサポートしたAMDのRadeon RX 5500XTでは物理的には16レーン分の接続端子を保有しているものの、実質的な通信速度としては8レーン分となっています。
先ほど説明しましたが、PCI-e 6.0ではその帯域幅の広さから、1レーンでも十分に速い通信速度を実現することができるでしょう。 もちろんグラフィックボードも進化していくのでそれなりに広い帯域幅は必要になってきますが、このままいけばx8スロットでの接続が当たり前になってくるかもしれません。
しかもPCI-eスロットのバスパワーはx1スロットだけで供給されるため、物理的にx1スロットに接続しても電源問題に直面することはありません。
そのため、より少ないレーン数で様々なデバイスを接続することができ、より多くのデバイスを接続することができるようになるのではないでしょうか。
こうなるとサーバー系の用途で非常に有能になってきそうです。
また、M.2スロットにPCI-e 6.0が採用されれば、今より更に少ないスロット数でより高速なM.2 SSD等を接続することができると考えられるので、よりコンパクトなM.2 SSDができるかもしれませんね
そしてこのPCI-e 6.0については6月ごろに詳細が発表され、2021年から使用準備が開始されます。といっても2021年から実際にPCI-e 6.0をサポートしたデバイスが見られるということではありません。