Intelが製造しているCPUには大きく分けて3種類「デスクトップ向け」「モバイル向け」「サーバー(データセンター)向け」が存在します。
2019年にCometlakeやIcelakeシリーズが登場して、モバイル向けCPU市場を大きく動かしました。そして2020年には「Comelake-S(デスクトップ向けCometlake)」が登場することも確認されており、残すのは「サーバー向け」についてです。この記事では実はあまり知られていない2020年度のIntelのサーバー向けCPUについて解説していきます。
この記事を1文で説明すると
- 2020年、サーバー向けのCPUシリーズ「Cooper lake」と「Icelake」が登場し、Icelakeについては10nmプロセスを採用し、PCI-e 4.0をサポートする可能性がある
現行のサーバー向けCPUについて
Intelのサーバー向けCPUはデスクトップ向けやモバイル向けラインナップとは異なったアーキテクチャを用いることがしばしばあります。
そういうわけで、サーバー向けCPUに関しては現行品すらもあまり知られていない現状です。ということでまず最初にIntelの現行のサーバー向けCPUについて解説していきます。
アーキテクチャは「Cascade lake」
また「lake」かよって話ですが、実はサーバー向けCPUのアーキテクチャも「Skylake」系のアーキテクチャが使われています。つまりは14nmプロセスルールです。
そしてIntelのサーバー向けCPUといったらやはり思い浮かぶのは「Xeon」シリーズでしょう。Xeonシリーズの最新といったら2019年にAppleから発表された「Mac Pro」の最高構成に搭載されている「Xeon W-3275M」が思い浮かぶ人はそう少なくないはずですが、これはワークステーション向けCPUです。
サーバー向けCPUとほぼ同じアーキテクチャを用いていますが、厳密にはサーバー向けではありません。そして最新のサーバー向けCPUはといいますと、「Xeon Platinum 92xxシリーズ」あたりになります。
ここでは例として最上位モデルの「Xeon Platinum 9282」の仕様を紹介します。
ちなみに、更に同じアーキテクチャを用いているCPUとして「CoreX」シリーズがあります。最新のものですと「Corei9-10000X」シリーズです。こちらはメインストリーム・デスクトップ向けとは異なる「ハイエンド・デスクトップ向け」という立ち位置です。
Xeon Platinum 9282の仕様
せっかくなのでワークステーション向け最上位の「Xeon W-3275M(Mac Pro )」、それからハイエンドデスクトップ向けの「Corei9-10980XE」と比較してみます。
比較項目 | Xeon Platinum 9282 | Xeon W-3275M | Corei9-10980XE |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Cascade lake | Cascade lake | Cascade lake |
プロセス | 14nm | 14nm | 14nm |
コア/スレッド | 56/112 | 28/56 | 18/36 |
最高周波数 | 3.8GHz | 4.4GHz | 4.6GHz |
L3キャッシュサイズ | 77MB | 38.5MB | 24.75MB |
TDP | 400W | 205W | 165W |
赤字のところは3つの中で最も高い数値のものです。
先ほど説明した通り、3つのCPUシリーズはすべて同じアーキテクチャを用いています。メインストリーム向けの「Coffee lake Refresh」等とはまた異なるアーキテクチャです。
より高い並列処理性能が必要とされるということでサーバー向けのXeonはコア数が最も多くなっています。ワークステーション向けも十分多いですが、ワークステーション・デスクトップの用途ならこれくらいのコア数で十分です。
そしてより高いゲーミング性能等が必要とされるCoreXシリーズについてはターボ時の動作周波数が非常に高く、コア当たりの性能が非常に高いです。
ワークステーション向けについてはバランスが取れていて、クリエイターに向いていたりテレビ業界(動画編集)などで需要のある並外れた性能を保有するデスクトップパソコンに搭載されたりします。その一例がMac Pro 2019年モデルです。
さて、現行のサーバー向けCPU、というよりは「Cascade lakeアーキテクチャ」について整理ができたところで、次世代のものを紹介します。
ちなみにこの3種(サーバー向け、ワークステーション向け、ハイエンドデスクトップ向け)はそれぞれ特化している処理が異なりますので性能を比較する意味はあまりありません。
2020年に登場するサーバー向けCPUについて
Intelにおいては発表したロードマップ通りに開発が進まないことがしばしばありますが、一応当初の予定ですと2020年には2種類、サーバー向けCPU用のアーキテクチャが登場します。
その2つとは、「Cooper lake」と「Icelake」です。
おいおいIcelakeって… って話ではありますが、とりあえず両者解説していきます。

1.Cooper lake(2020年初期~)
そして、サーバー向けIcelakeアーキテクチャの前に登場する予定なのが「Cooper lake」です。
Cooper lakeは基本的にはCascade lakeと同じようなアーキテクチャを持ち、14nmプロセスを採用するわけですが、「bfloat16」命令を新たにサポートしており、より強化されたAI学習アクセラレーションを提供します。
bfloat16は通常の「float16」形式とは異なり、符号ビットが 1 つ、指数ビットが 8 つ、仮数ビットが 7 つ(1:8:7)という形式になっていて、とあるエンコードにおいてはより高い精度を発揮するそうです。
参考:https://cloud.google.com/tpu/docs/bfloat16?hl=ja
もう一つの特徴としては、56コアモデルにおいてLGAソケット(CPU側にピンが無い)をサポートしている点です。従来のCascade lakeではBGA(CPU側にピンがある)ソケットのみのサポートとなっていました。
2020年に登場するということで、そろそろPCI-e 4.0をサポートしても良いアーキテクチャではありますが、どうやらPCI-e 3.0のままだそうです。
このアーキテクチャを用いたプロセッサが2020年の後半まで活躍していくでしょう。
2.Icelake(2020年後半~)
そして、Cooper lakeを引き継ぐように2020年後半に登場すると説明されているのが「Icelake」アーキテクチャです。
この記事をご覧になられている方なら、すでに市場に「Icelake」アーキテクチャが出回っていることをご存じでしょう。
結局メインストリーム・デスクトップ向けモデルは登場しなかったIcelakeアーキテクチャですが、今となってはモバイル向けCPU市場をもう一つの第十世代Coreシリーズ「Cometlake」と共に独占しています。
そしてこの「Icelake」アーキテクチャがサーバー向けCPUにも採用されます。全く持って同じアーキテクチャというわけではありませんが、10nmプロセスを採用しており、非常に電力効率が高くなります。
IntelはこのIcelakeベースのサーバー向けCPUにはCooper lakeプロセッサとの互換性があると説明していますが、実際のところIcelakeが完全にCooper lakeの上位互換になるわけではないので、Cooper lakeとはまた別もののアーキテクチャと考えた方が良いかもしれません。
メインストリーム市場でいうIcelakeとCometlakeの関係と似たような感じでしょうか。
そして、このサーバー向けIcelakeアーキテクチャでサポートされるとされているのが「PCIe 4.0」です。すでに登場しているIcelakeプロセッサ(モバイル向け)ではPCIe 3.0までしかサポートしていませんので、サーバー向けとなって急に4.0をサポートするというのは少し不思議な話ではありますが、データセンター向けに優先してサポートさせるという可能性も高いです。
ただ、このIcelakeアーキテクチャが2020年後半に予定通り登場するのだとしたら、Cooper lakeあるいはIcelakeアーキテクチャのどちらかを採用した次世代のワークステーション向けCPUシリーズとハイエンド・デスクトップ向けCPUシリーズが誕生することでしょう。
ワークステーション向けでしたら、「Xeon W-33xx」シリーズとなり、ハイエンド・デスクトップ向けでしたら、「Corei9-11000X」シリーズとなります。
Xeon W-3375やCorei9-11980XE等ということですね。
2020年こそPCI-e 4.0をサポート?
ただ、もしもサーバー用Icelakeアーキテクチャを用いたハイエンド・デスクトップ向けCPUが登場するのならば、ハイエンド・デスクトップ向けCPUは2020年内にPCI-e 4.0をサポートするのかもしれません。
しかし、2020年のデスクトップ向け「Cometlake-S」ではPCI-e 4.0をサポートしないことがすでに確認されており、デスクトップ向けについては2021年の「Rocketlake-S」からになります。
そうなると、ハイエンド・デスクトップ向けCPU等が先にPCI-e 4.0をサポートするということになります。そのため、もしかすると2020年度のハイエンド・デスクトップ向けプロセッサは「Cooper lake」を採用するか、あるいはIcelake自体がPCI-e 4.0をサポートしないのかもしれません。
私の意見としては後者説が濃厚なのですが、そうするとさすがにPCI-e 4.0へのサポートが遅れすぎです。AMDはとっくにPCI-e 4.0をサポートしたCPUシリーズを製造していますので、このままではPCIe-e 4.0をサポートしていないという消去法でAMDのCPUが拡大していく恐れがあります。
更に、最近の情報ですとIntelが開発している次世代のOptaneメモリはPCI-e 4.0をサポートするとのことです。これらを合わせて考えると、Intelは2020年にPCI-e 4.0をサポートしないという手はないでしょう。
そしてやはりカギとなってくるのが「サーバー向けIcelakeの存在」です。
ここで、おまけ程度にIntelの一般向けCPUロードマップを紹介します。

参考記事:https://www.tomshardware.com/news/intel-has-pcie-40-optane-ssds-ready-but-nothing-to-plug-them-in-to
https://www.tomshardware.com/news/intel-refutes-reports-of-further-roadmap-delays