ついに2019年も終了を迎え、2020年に突入しました。2020年は東京オリンピックが開催されるということで特別な年になるに違いありませんが、その一方で「2020年代の初めの年」でもあります。
ところで、パソコンゲームやAI処理を行う際に必須になってくる「グラフィックボード」というパーツですが、2010年から2019年までで圧倒的な進化を遂げました。いよいよ2020年代に突入していくということで、2010年代のグラフィックボードをおさらいしていきましょう。
この記事では、グラフィックボード(GPU)界の二強ともいえる「Nvidia(緑チーム)」と「AMD(赤チーム)」の製品を紹介していきます。
この記事を一言で説明すると
- Nvidiaの方がAMDよりも2010年から現在まで常に優秀であった
両社の2010年代のGPU開発を年表にしてみる
まずは両社が2010年代に製造したGPUを年表にしてみましょう。ここで紹介するのは一般的に市場で手に入り、通常のユーザーが自作パソコン等用に利用するグラフィックボードに使われるGPUです。
つまりは、OEM専用だったり非売品だったりなどのややこしいGPUは省きます。また、クリエイター向けの、OpenGLに最適化されたものではなく、3Dゲーム向けのDircetXに特化されたGPUを紹介します。(ごく一般的に見るGPU)
年 | Nvidia | プロセス | AMD | プロセス |
---|---|---|---|---|
2010 | GeForce GT/GTS/GTX 400シリーズ | 40nm | HD 5000シリーズ | 40nm |
2011 | GeForce GT/GTX 500シリーズ | 40nm | HD 6000シリーズ | 40nm |
2012 | GeForce GT/GTX 600シリーズ | 40/28nm | HD 7000シリーズ | 28nm |
2013 | GeForce GTX 700シリーズ | 28nm | HD 8000シリーズ | 28nm |
2014 | GeForce GT 700,GTX TITAN | 28nm | R5,7,9 200シリーズ | 28nm |
2015 | GeForce GTX 900,GTX TITAN X | 28nm | R7,9 300シリーズ,Furyシリーズ | 28nm |
2016 | GeForce GTX 1000,NVIDIA TITAN X | 16/14nm | RX 400シリーズ | 14nm |
2017 | GeForce GTX 1000 ti,GT 1030,TITAN Xp | 16/14nm | RX 500シリーズ/Vegaシリーズ | 14/12nm |
2018 | GeForce RTX 2000,TITAN RTX | 12nm | RX 590等 | 12nm |
2019 | GeForce GTX 1600,RTX 2000 SUPER | 12nm | RX 5000シリーズ,Radeon VII(Vega) | 7nm |
以上のようになっています。
Nvidiaの2010年代
Nvidiaについては2010年のころにはすでにGTXシリーズが導入されており、3Dゲームへの意識も高まっていました。400シリーズまでになりますが、その時はGTとGTXの間に「GTS」というシリーズも存在しており、モデルが更に細かくなっていました。そして2012年頃からは28nmプロセスのKeplerアーキテクチャが使われるようになって、GTX 600シリーズなんかは相当人気が出ました。
そしてMaxwell,Pascalアーキテクチャと開発していって、ついにGTX 1000シリーズの製造が開始されました。それが2016年のことです。
プロセスは16,14nmになり、電力効率が増したのに加えてトランジスタ搭載量をさらに増やすことができるようになりました。そしてGTX 1080 tiなどのハイエンドGPUが誕生し、今でもその性能は色あせていません。
一方でGT 1030などのローエンドGPUも開発され、非常にコストパフォーマンスが高いことから、何気なく支持を得ていました。
そして2018年に、Turingというアーキテクチャと共にリアルタイム・レイ・トレーシングをハードウェア単位でサポートした「RTX」シリーズが誕生しました。
GTXシリーズの完全上位互換というわけでもなく、これまでのGTX 1000シリーズの後継は形式上GTX 1600シリーズとなりました。しかしNvidiaはRTXにかなり重点を置いており、GTX 1600シリーズで登場したのはローエンド・ミドルレンジGPUのみでした。そしてこのままGTXシリーズはその姿を薄くしていき、最終的には低性能・低価格シリーズに落ち着くか、RTXシリーズのみになるかの二択です。
AMDの2010年代
AMDのGPUブランドは「Radeon」です。2010年頃には「Radeon HD」シリーズが主力となっており、Radeon HD 5000シリーズからスタートしました。
そしてリネームを繰り返すなどしてややこしいモデルを発売しながらも、1年に1世代、新しいGPUシリーズを提供し続けました。
そして最後のRadeon HDシリーズとなる「Radeon HD 8000シリーズ」が登場した後は「Rx」シリーズが始まりました。この「x」というのはアルファベット「X」を表しているのではなく、数字が入るという意味です。
R9シリーズは当時としては非常にパフォーマンスが高く、ハイエンドGPUとして注目を浴びました。ただ、それでもNvidiaとトントンくらいの性能です。細かい性能については後程紹介します。
そして2016年になって、R9 400シリーズ等が登場するかと思われていたところ、R3,5,7などのモデルがなくなり、RX 400シリーズとなりました。
RX 400シリーズの「X」は「10」を表している、つまり「R10 400」だという解釈が正しいという説が濃厚です。
このころから14nmプロセスが使われるようになり、消費電力がバカ高いと思われていたRadeon GPUにもワットパフォーマンスが非常に高いモデルが現れるようになりました。
そして翌年にはマイナーチェンジとなるRX 500シリーズが登場し、さらに翌年にはRX 590が登場しました。それと同時に次世代グラフィックスとなる「Vega」シリーズも登場しましたが、メインストリーム向けというよりはハイエンド向けの「Vega 56,64」や、CPU内蔵グラフィックス用に使われました。
そして2019年の頭にはVega 20アーキテクチャを採用した新ハイエンドGPU「Radeon VII」が登場し、初の7nmプロセスGPUとなりました。
7月には本格的に7nmプロセスを導入したNaviアーキテクチャを採用したRX 5000シリーズが登場し、12月にはRX 5500XTなども発売されました。
Nvidia vs AMD 2010年代GPU性能比較
それでは両社の2010年代のGPUの性能を比較していきます。ここでは一般的な市場で手に入る最高のモデルを参考にしたスコアを表示させます。
以上のようになりました。
2010年の時点でGTXシリーズを製造しているNvidia社の方が圧倒的に優秀だったことがわかります。
一方でRadeon HDはメーカー製パソコンに搭載されたりするなどして一部使われていましたが、やはりNvidiaの人気の方が高かったようです。
そしてNvidiaは1年に1回ずつ世代を新しくしていき、2013年にGTX 700シリーズの最上位モデル「GTX 780 ti」で優秀すぎるパフォーマンスを発揮しました。
GTX 780 tiは当時のゲーミング用途最強グラボで、今でも最新のゲームを普通にプレイできるくらいの性能があります。ただ、消費電力がとにかく多いのと、発熱量が多いのが欠点でした。
そして同時期、AMDからはR9 290Xが発売されるなどして、ハイエンドラインナップまでしっかりと揃えられました。
そして2017年頃にはNvidiaからGTX 1080 ti等が発売され、同時期にAMDからVegaアーキテクチャを採用したVega 64などのハイエンドGPUが製造され始めました。どちらも非常に優秀ですが、Vega 64については発熱量が多い、消費電力が多すぎるなどの欠点を抱えていました。
そして2018年にはNvidiaから新たなGPUシリーズとしてRTXシリーズが製造され始め、RTX 2080 ti/TITAN RTXでGPUの頂点を獲得しました。
2019年には、Nvidiaからは既存RTXシリーズの低価格版などが製造された一方、AMDからは新たなハイエンドGPUとしてRadeon VIIが製造されました。Radeon VIIは初めての7nmプロセスGPUとして注目を集めましたが、結局のところパフォーマンスではNvidiaにかなわないといった感じです。
そして同時にNaviアーキテクチャを用いたRX 5000シリーズを製造し始めました。このシリーズは主に中堅GPUといった感じで、ハイエンドモデルは登場しませんでした。
来年にはNvidiaからAMPEREアーキテクチャを搭載した「RTX 3000シリーズ」、そしてAMDからはNavi 20アーキテクチャを搭載したRadeon VIIの後継ハイエンドGPUが登場する見込みです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。グラフィックボード市場はNvidia社とAMD社の二強が支配しているように思えますが、その中でもやはりNvidia社の方が優秀といった感じです。
Nvidia社ではまだ7nmプロセスGPUが製造されていませんが、実際のところAMDと比較して、プロセスルールに関係なく高い電力効率やパフォーマンスを保有しているといった現状です。あまり関係ないのかもしれませんね。
そして来年からはIntelも外付けGPUを製造し始め、グラフィックボード市場がIntel,Nvidia,AMDの三社によって支配されていく予定です。青チーム、緑チーム、赤チーム、それぞれこれからどんな動きをしていくのか、非常に興味深いですね。
今度は2020年から2029年のグラフィックボードも振り返りたいと思います。
ちなみにCPU版も作りました。